2005年10月3日(月)「しんぶん赤旗」
主張
道路公団民営化
高速道 走り続ける火の車
道路四公団が十月一日、民営化されました。
日本道路公団は「東日本」「中日本」「西日本」に三分割。他に「首都高速」「阪神高速」「本四連絡高速」が発足し、六つの株式会社で高速道路を維持・管理することになります。同時に、債務と道路資産を引き継ぐ独立行政法人の「日本高速道路保有・債務返済機構」が設立されました。
この道路公団民営化には、小泉「構造改革」とは何であるかという実態が映し出されています。
■腐敗を悪化させる
公正取引委員会は九月二十九日、橋梁(きょうりょう)工事をめぐる談合事件で日本道路公団に官製談合防止法を適用し、改善を求めました。
その中で、公団の前副総裁ら幹部が天下り先確保のため、受注側の大手企業に天下りした元理事らとともに談合に関与したと指摘。公団は単に談合を黙認・追認していたのにとどまらず、「事業者に談合を行わせた」と断定しています。
公団の民営化後も、天下り・談合にまみれた腐敗と癒着の構造に徹底的にメスを入れることが求められるのは当然です。しかし、談合組織に加わっていた企業の出身者が「東日本」「西日本」の会長に納まるなど、不信はぬぐえません。
ここで見過ごせないのは、民営化そのものが、腐敗と癒着を一掃する上で大きな障害になることです。
罰則がないなど不十分さはありますが、今回のように一定の役割を果たした官製談合防止法や入札契約適正化法は、国の出資比率が二分の一を下回ったとたんに適用されなくなります。情報公開法は、民営化と同時に対象からはずされました。
天下りも、民営化後は見掛け上、「再就職」に変わります。
民営化は、国民の目から公団の実態を隠して、談合や腐敗を悪化させる方向に作用します。
民営化の当初の看板は「むだな高速道路を造らない」ということでした。ところが出来上がった枠組みは、国と地方の税金投入と新たな借金で「第四次全国総合開発計画」の総延長一万四千キロに向けて高速道路を建設し続ける仕組みです。
もう一つの重大問題は、道路公団の約四十兆円の累積債務の処理です。
四十五年で完済するとしていますが、不採算の高速道路を造り続けるなら借金はいっそう膨らみます。金利は4%を下回るという甘い想定です。実際の金利が4%を上回ったり需要が予測を下回れば、もともとの返済計画すら破たんします。そのツケ払いに国民の血税が投入される危険があります。
■大もとから絶つ
政治資金収支報告書によると、橋梁工事の談合組織のメンバーからの自民党への献金は、十二年間で十七億円に上ります。
談合によって不当に得た利益の一部が自民党に還流していたということです。
橋梁談合による受注企業の不当利得は、公団から見ればコスト増であり、借金返済を遅らせます。最終的には国民の税金によるしりぬぐいを当てにした行為です。自民党は、そこから甘い汁を吸っています。
小泉「構造改革」の目玉である道路公団の民営化は、こうした構造をいっそう野放しにします。
国民の厳しい監視とともに、企業・団体献金の禁止や実効性のある天下り規制、ファミリー企業の廃止など、癒着と腐敗の構造を大もとから絶つことが必要です。