2005年10月2日(日)「しんぶん赤旗」

ベトナムの台風対策 

人命優先で60万人避難


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 ベトナムの台風シーズンは六月から十一月までで、集中するのは八月末から九月の初めです。年間に襲来する台風または熱帯性低気圧は平均七つ。日本など北東アジアの台風とくらべると小型です。主に中部に上陸します。

 九月末の台風18号(ベトナムでは7号台風)は海南島を経て、二十七日にベトナム北部(中心はナムディン省)に上陸し、ホンハー(紅河)に沿って北西に進み、ラオス、タイにまで豪雨をもたらしました。

 ベトナムには台風、洪水に備えて常設の中央洪水・台風対策委員会(地方は同対策室)があります。大型の台風や重大な洪水の発生の際は首相が直接、対策の指揮を執ります。

 今回は襲来二日前の二十五日に首相が国防、警察、水産、交通、運輸、工業、保健、天然資源・環境、農業・地方開発の各省、中央対策委員会の関連部局、各省・都市人民委員会あてに緊急対策を指示しました。翌二十六日にはファン・バン・カイ首相が緊急の対策会議を主催して、具体策を検討しました。

 当局によると、対策会議では、人命の損失を最小限に食い止めることを最優先の課題とすることを確認。そのうえで、今回の台風の風雨が防波堤や河川の堤防の強度を上回ることが指摘されたため、二万五千の軍兵士を補強工事に投入し、危険地帯から三十万人の住民を避難させることを決めました。

 副首相、各閣僚、地方の人民委員会委員長が現地で陣頭指揮に立ちました。堤防の補強工事が昼夜兼行で行われました。当初計画された三十万人に加え、ナムディンの防波堤の決壊で新たに三十万人が避難し、避難した人の合計は六十万人になりました。

 こうした対応の結果、人命の被害は海岸地帯では七人と最小限に食い止められました。しかし山間部の鉄砲水、土石流による死亡・行方不明が六十二人になる事態が発生。沿岸部での緊急対策と同時に、治山治水の長期的対策が重要であることを浮き彫りにしました。(ハノイ=鈴木勝比古)


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