2005年9月27日(火)「しんぶん赤旗」

損害保険不払い

16社で16万件、67億円 各社調査で明るみに

大量の特約で契約集め、履行せず


 損害保険各社が契約者に支払うべき保険金を支払っていなかったケースが次々と明るみに出ています。各社が過去三年分を調査し、これまでに判明した不払いは十六社で合計十六万件、総額約六十七億円にも上ります。このほか三社と外資系の損保会社も調査を進めており、不払い件数はさらに膨らむ見通しです。生命保険に続いて判明した保険金不払いに消費者の信頼が大きく揺らいでいます。


表

 保険金の不払いは火災や傷害の保障もありますが、ほとんどが自動車保険に集中しています。自動車保険のなかでも、車の修理代や被害者への賠償などの主契約ではなく、見舞金や代車費用など付随的な「特約」での不払いが大半を占めています。各社は一様に「保険金支払いシステムのチェック機能が不十分だった」からだと説明していますが、なぜそうなったのかの具体的な説明はありません。

 大手損保会社、損保ジャパンに勤務するベテラン社員は、激化する競争のなかで顧客を獲得するために大量に開発された特約が支払い業務を複雑にし、結局、支払わないままの特約が増えたと指摘します。

 「一九九八年の保険料の自由化以降、保険業界の競争は激化しています。契約者を取り込んでいくために百種類以上の特約が開発されました。それに伴い約款も頻繁に改定されています。そのスピードにシステム開発や社員の業務知識が追いついていない現状があります。ギリギリの人員配置で業務に当たっているため、社員が支払い業務の全体を点検する余裕もありません。保険の使命を忘れがちになってしまいます」

 損保会社は保険金を支払うさい、契約者への支払いや被害者への賠償を優先させ、特約の処理は後回しにするため、特約の支払い漏れが生じやすくなります。契約者が請求しなければ保険金を支払わない場合が多く、請求のない特約については支払わないケースが続出しました。

 前出の社員は強調します。「これは経営ミスです。経営陣の社会的な処分はあってしかるべき。契約者を裏切る結果になるような過当競争はやめて、産業としてしっかり立て直すことが必要です」


■不払いは構造的問題

 保険評論家・佐藤立志氏の話 損害保険業界の保険金不払いは構造的な問題です。損保会社は特約の保険金支払いで自腹を切らなければならないので、なるべく支払わないようにしています。さらに、本社に保険金を請求する代理店は、請求件数が増えると本社からの報酬が減ることになる。そのため契約者に保険金が下りることを伝えないということが起きています。各社の調査が過去三年しかさかのぼっていないことも問題です。それ以前にさかのぼると阪神淡路大震災など支払わなければならない案件が大量に出てくる。そのような事態を避けるため、わからなければ保険金は払わないという姿勢です。

 行政が損保会社をきちんと指導していくことが求められています。


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