2005年9月26日(月)「しんぶん赤旗」

原油高 遠洋漁業を直撃

日本有数のマグロ漁船基地  宮城・気仙沼にみる

「次の航海に出られるか…」


 歯止めのかからない原油の価格暴騰。石油を使う産業への打撃は深刻です。とりわけ、経費に占める燃料費の割合が高い遠洋漁業は「いまの燃油高が続けば、倒産する業者がバタバタと出てくる」(漁協関係者)といわれるほど。日本有数のマグロ漁船基地・宮城県気仙沼市に実態を見ました。(吉武克郎)


 はるか北大西洋や、南アフリカのケープタウン沖など、乗組員たちが「そこにマグロがいる限り、どこへでも行く」というマグロ漁船。世界の果てまでマグロを追う船が消費する燃油は、一航海(一年程度)で千キロリットルにも及びます。

■燃料代は5割増

 二年前なら、燃油は一キロリットルあたり三万七千八百円。燃料費は経費の15%程度でした。それが、昨年六月から急騰し始め、いまは約一・五倍の五万七千五百円。一航海につき約二千万円、燃料費が増える計算になります。水揚げは一隻あたり二億五千万円程度と低迷しているもとで、です。

 「水産業者の経営が成り立つ燃油価格は三万円台後半までだ。いまの価格は、もう限界を超えている。しかし、燃料費を消費者に転嫁することもできないし…」

 水産業者二十社、遠洋マグロ漁船六十六隻が所属する宮城県北部鰹鮪漁協の桜木勇人専務理事は苦しい現状を話します。

 そもそも漁業は、苦しい経営環境に置かれています。遠洋マグロ漁業の場合、資源維持のために漁獲量が制限されているうえ、台湾などからの安い輸入物が市場を席巻。水産業界は青息吐息です。そこに追い打ちをかけるような燃油価格の暴騰に、関係者たちは危機感を募らせています。

 「オイルショックの最高時で、一キロリットルあたり七万円強だった。その水準に近づいている。この状況が続けば、倒産する業者が生まれかねない。次の航海に出られる船が、どれだけあることか。いまの時点でも、漁に出られずにいる船があるのに」(桜木専務)

 実際、気仙沼港を歩くと、出漁のあてのないマグロ漁船が所在なげにとめられています。仕事を失った船で港があふれかえる…その悪夢は避けたい、というのが関係者たちの思いです。

■立ち上がる漁民

 悪化の一途をたどる経営環境に、漁民らも立ち上がり始めています。

 「食料を輸入に頼るな!」「国は燃油高騰をおさえろ!」―七月十九日、千人の漁業関係者たちの声が仙台の中心街にこだましました。

 県内の漁協などが開いた「宮城県漁業危機突破大会」です。あいさつで県漁連の木村稔会長は、燃油の高騰について「いまや漁業者の自助努力の範囲を超えている」と言及。対策を行政に求めました。気仙沼市でも六月に決起大会が開かれ、地元の漁業関係者が燃油への価格補てんを訴えました。

 現場からの声を受けて水産庁は八月三十一日、「燃油高騰緊急対策」を発表。低速走行など省エネに取り組む漁業者に低利の融資をする、などの施策を始めました。

 しかし、この施策の効果は未知数です。前出の桜木専務は話します。

 「『低利の融資』と言われても、いまの燃油価格が続いては、借りても返せない。また船は、マグロのいる海域に向かって、台湾などの漁船と常に競争をしている。低速走行をすればマグロは獲れず、獲ろうと思えば全速力で走らざるを得ない。やはり抜本的な対策としては、燃油への価格補てんをしてほしい。『なぜ漁業だけ優遇されるのか』と、おしかりを受けるかもしれないが…」

 マグロの自給率は、半分以下の46%(二〇〇〇年)。国民の食料にかかわる問題です。漁業者が経営を続けられる施策が求められています。


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