2005年9月12日(月)「しんぶん赤旗」

公式戦初対局の両者

囲碁新人王戦 15日から決勝3番勝負


 いつタイトルを取ってもおかしくない実力者、金秀俊(きむ・すじゅん)七段(26)か、一流棋士を次々破って碁界に旋風を巻き起こしている新鋭、井山裕太(いやま・ゆうた)四段(16)か――囲碁の第三十期新人王戦決勝三番勝負(しんぶん赤旗主催)が十五日から始まります。見どころを探りました。

■実力は一流・金 秀俊七段

■注目の16歳・井山裕太四段

 年齢がちょうど十歳違う両者は、今回の三番勝負が公式戦初対局となります。

 金七段は、韓国出身、日本棋院本院所属。新人王戦は六年前と四年前の二度、四強入りをした実力者です。決勝進出は今回が初めてです。

 井山四段は、大阪出身、同関西総本部所属。新人王戦初出場で一気に決勝に駆け上がりました。

 両者の最近の活躍ぶりを見てみましょう。

 まず金七段。各棋戦でこれまでに準優勝五回の実績を重ねているのが光ります。新鋭トーナメント(01、02、03年)、NEC俊英(01年)、JAL新鋭早碁(05年)です。

 昨年は、天元戦挑戦者決定戦まで勝ち上がり、棋道賞の新人賞に輝いています。

 ことしは、小林光一九段、高尾紳路本因坊、趙治勲十段などを下しており、実力はすでに一流棋士に肩を並べるところまできています。

 ただ、棋戦優勝はまだ一回もないのは、悔しいところ。今度こその意気込みで三番勝負に臨むことでしょう。

 通算成績359勝119敗1持碁。ことしの成績21勝11敗。(8月30日現在)

 次に、井山四段。こちらは何といっても十六歳三カ月の若さが注目の的です。

 タイトル獲得の最年少記録は、趙治勲五段(段位は当時、新鋭トーナメント)の十七歳〇カ月が歴代第一位です。第二位は、依田紀基五段の十七歳五カ月(同、新人王戦)です。井山四段が今回優勝すればこの記録を塗り替えることになります。

 今年に入ってから、早碁棋戦を舞台に張栩名人・王座や王立誠九段、趙(治)十段らを破る大活躍をしプロ高段者も注目。「あの子は強い」の評判がしきりに聞かれるようになりました。

 プロ入り以来の通算成績は102勝32敗1持碁、今年は24勝8敗。

 関西総本部所属棋士としては、山田規三生七段(当時)以来八年ぶりの優勝なるか、注目されます。

■成長の糧に 金秀俊七段の話

 新人王戦はこれまでベスト4に二回勝ち上がっています。最初は久保秀夫五段に負け、四年前には山下敬吾天元に負けました。

 今期のトーナメント。私の名前は、強敵ぞろいの左の山に入っていました。右の山なら楽勝なのについてない、と思いました。しかし運良く勝ち上がりました。準決勝の蘇耀国七段は(各棋戦で勝ちまくり)乗っていたので、ツキを奪ってやろうと燃えて打ちました。

 決勝の井山くんも今乗っています。強いです。棋風は高尾くん(紳路本因坊)に似ています。

 これまでに準優勝五回しましたが、優勝できないのは、まだ弱い証拠。今度の三番勝負を成長の糧にしたいと思います。

■力を出し切る 井山裕太四段の話

 今期トーナメントは、みんな実力者ばかりで楽ではありませんでした。

 自分の実力からみて、全体的にうまく打てたと思います。

 金さんとは、公式戦では初手合です。力が強くて読みがしっかりしています。

 六月は負けがこんでいましたが、七月、早碁棋戦で張栩(ちょう・う)名人・王座に勝ちました。去年まで連敗したことがなかったので自信をなくしていたのですが、張先生の勝負手をしのいで勝ったので自信になりました。それ以後は、自分の碁が打てています。

 今回は、公式戦では初の決勝です。地元の人も応援してくれていますし、自分の力を出し切るようにしたいと思います。

■今期の見どころは 観戦記者に聞く

■急上昇の井山 橋本樹夢さん

 やあ、新鮮な顔合わせになった。二人とも厳しい攻めの碁がバックボーンで、一歩も引かぬ攻防を展開するに違いない。どこで決め手が出るか、または攻め過ぎるか、火の出るような一局と、もう一局はトッププロも一目置く正確な寄せ勝負の細碁が見たい。金に一日の長はあるが、井山も春以来、阿含杯やNHK杯で強豪を立て続けに下すなど急上昇しており、互角。

■結果は金次第 相場一宏さん

 この棋戦での新鋭・古豪対決だ。最近の井山の伸び率は高く、第一線級の金も安閑とはしていられない。

 気になるのは金の「この一番」の負けぐせだ。今年だけでも決勝で四回敗れている。

 老成した観のないでもない井山の落ち着きぶりに対し、金は自分自身とどうたたかうか。精神面でいえば、十歳差は逆になっているのかもしれない。結果は金しだいだろう。

■金の奮起に期待 佐藤伸さん

 八年ほど前、金二段は棋聖戦最高棋士決定戦に進出した。師の趙治勲が「ぼくより強い弟子がいる」と自慢したのはそのころだったか。師のみならず、その実力は仲間うちでも評判が高い。それなのに実力が実績を伴わないのはなぜだろう。

 弱冠十六歳の井山にばかり注目が集まるのは口惜しい。奮起して、「さすが」と思わせる結果を出してほしい。それだけの力はあるのだから。

■三番勝負日程

 〈第一局〉九月十五日(木)、大阪・日本棋院関西総本部

 〈第二局〉同二十三日(祝)、東京・日本棋院

 〈第三局〉十月五日(水)、東京・日本棋院

■ネット中継

 三番ともインターネット中継をおこないます。勝負の模様は、日本棋院、しんぶん赤旗どちらのHPでもご覧になれます。


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