2005年9月2日(金)「しんぶん赤旗」

バグダッド大惨事

死者千人超すもよう

大半は女性と子ども


 【カイロ=小泉大介】イラクの首都バグダッドで八月三十一日に発生したイスラム教シーア派宗教行事参加者のパニックによる死者は、九月一日午前の時点で少なくとも九百六十五人に達したことが確認されました。ロイター通信が当局者の話として伝えたところによると、死者は最終的には千人を超えるもようです。


 イラク内務省は、三十一日、死者は橋の上で将棋倒しになったことによる圧死や、橋からチグリス川に転落しての水死がほとんどで、その大半は女性と子どもだったと発表しました。遺体の多数が川底に残されているといいます。

 パニックは自爆テロのうわさが直接の原因となったといわれますが、シーア派のジャブル内相や同派指導部が、イスラム教スンニ派の武装勢力が群衆のなかにテロリストがいると意図的に流したと指摘しているのに対し、スンニ派のドレイミ国防相は宗派間の対立とは無関係だとの見解を表明するなど、政府の中でも不一致が生じています。

 住民のなかでは、「宗教行事がテロの標的になる可能性は最初からわかっていたはずだ」と、治安部隊による警備体制の不備を非難する声も高まっています。アリ保健相は内相と国防相にたいし、多数の死傷者を出した責任を取り辞任するよう要求しました。

 移行政府のジャファリ首相は三十一日、三日間の服喪を宣言するとともに、テレビで国民の団結を訴えました。


■パニックの背景に宗派対立

■米軍攻撃で関係悪化

 今回のイラクの首都バグダッドでの大惨事は、治安情勢悪化に加え、憲法起草過程でのイスラム教シーア派とスンニ派間の対立の顕在化という混乱のなかで発生しました。シーア派住民は、昨年三月のカルバラでの自爆テロ(百数十人死亡)など、同派住民に向けられた数々の大規模テロを経験してきました。イラク国民が極度の不安と緊張の中での生活を強いられている実態を浮き彫りにしました。

 パニックの数時間前には、宗教行事参加者を狙ったものを含め、バグダッドだけで十回近くの迫撃弾攻撃が発生しました。これらがテロ情報によるパニックを助長したことは疑いありません。

 イラクでは、八月二十八日に承認された憲法草案に明記された連邦制導入をめぐり、これを支持するシーア派と反対のスンニ派との対立が鮮明になり、スンニ派は十月に実施される国民投票で憲法草案を否決する動きを強めています。

 米軍がイラクで大規模な軍事作戦を依然として継続していることも重大です。同軍は二十九日から三十日にかけ、西部カイムで「テロリスト掃討」を口実に戦闘機による空爆を行い、現地医師の証言では女性や子どもら住民四十五人を殺害しました。

 米軍は大規模攻撃でテロ勢力に活動の口実を与えると同時に、スンニ派住民地域を狙い撃ちし犠牲を拡大することで、政治的疎外感を深める同派をさらに追い詰めています。米軍自らが宗派間の対立をあおっていると指摘せざるを得ない状況となっています。

 今回の事態をうけ、イラクのシーア派最高権威であるシスタニ師は「挑発者に付け入るすきを与えることのないようすべてのイラク人が団結し協力する」よう訴えました。スンニ派の有力組織、イスラム聖職者協会のダーリ事務局長も大惨事の犠牲者に深い哀悼の意を表しました。

 (カイロ=小泉大介)


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