2005年8月25日(木)「しんぶん赤旗」

主張

小泉郵政演説

「財」尊民卑の民営化論


 小泉首相・自民党総裁の街頭演説は、郵政民営化一本やりです。

 「公務員を減らしなさい、みんな賛成でしょう。民間にできることは民間に、賛成でしょう」。公務員でなければいけないというのは「官尊民卑」の考え方だ―と。

■金権政治を放置して

 首相が公務員削減を強調するのは、行政と企業、政治の癒着の中で、一部の高級官僚が甘い汁を吸っていることへの国民の怒りを勘定に入れてのことでしょう。道路公団幹部らによる談合・工事費つりあげ、官僚の企業への天下り、関係企業が事実を隠してまき散らし続けたアスベスト公害など、不祥事がつぎつぎと起こっています。官のトップである小泉首相の責任が問われます。

 ところが小泉首相は、現実の暗部にメスを入れようとしません。政治をゆがめる企業献金も野放しを続けています。こんな首相が公務員削減を持ち出すのは、金権政治を正すべき自らの責任を逃れ、国民の怒りに便乗しようとしているだけです。

 公務員をやみくもに減らせばいいというのは、何ら改革に値しません。人口千人当たりの公務員数は、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツと比べて日本は最も少ないのが実態です(総務省調査)。

 国の仕事のうち税金の無駄遣いやもっぱら大企業に奉仕するような仕事を減らし、教育や福祉、防災など国民生活に必要な仕事を充実させることこそ改革です。もし公務員を減らすというなら、無駄な戦車を操っている自衛隊ではないでしょうか。

 公務員削減を郵政民営化に結び付ける議論は大きなごまかしです。郵政事業は独立採算で、職員の人件費を含めて税金投入を一円も受けずに経営してきました。民営化してもまったく税金の節約にはなりません。

 「民間にできること」と言いますが、郵政事業がやっているのは民間にはできない仕事です。

 全国津々浦々に均一料金で手紙やはがきを届け、離島や過疎地でも貯金・保険の基礎的な金融サービスを提供する。ATM(現金自動預払機)は手数料を取らず全機種が視覚障害者に対応しているなど、利益優先の民間企業にはできない仕事を担って国民生活を支えています。

 このことは、小泉首相も郵政大臣を務めていたとき、はっきり認めていました。「民間のでき得ないところを郵政事業はやっている、そこにまた国民の大きな信頼がある」(一九九三年二月)と国会で答弁しています。

 民間にできないと知っているのに民営化し、郵貯を銀行化し簡保を保険会社化しようというのです。民営化で郵政サービスがどうなるかは、リストラで店舗をどんどん閉鎖し、庶民から手数料をしぼりとる大銀行のありさまを見れば明らかです。

■内容も手法も大問題

 郵政民営化は競争相手の郵貯・簡保を葬り去ろうとする銀行・保険業界の年来の野望です。小泉首相は郵政民営化を実行することで財界の野望を実現する一方、庶民にとって切実な郵政サービスをずたずたにしようとしています。国民向けサービスよりも財界要求を優先する首相こそ「財」尊民卑ではありませんか。

 小泉首相は郵政民営化以外は何も語りませんが、自民党は公約に消費税増税、憲法改定を盛り込んでいます。郵政以外はすべて白紙委任せよというやり方は民主主義を壊し、独裁政治につながるやり方です。

 郵政民営化は、内容の点でも手法の点でも、国民にとって「百害あって一利なし」です。


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