2005年8月21日(日)「しんぶん赤旗」
港湾労組 無期限ストへ
人員削減狙う経営側
ロシア・サンクトペテルブルク
【モスクワ=田川実】フィンランド湾に面し多くの人とモノが行き交うロシア第二の都市サンクトペテルブルク。この北の玄関で船の積み荷の揚げ降ろしをする港湾労働者たちが、事故補償の切り下げや一方的な人員削減、労働条件の変更などを狙う経営者に抗議し、三十日から無期限ストライキに入ることを決めました。秋風の吹き始めた港には、労働者の熱気と緊張が漂っています。
同市の港には三十以上の船荷の揚げ降ろし会社があり、五社に労働組合があります。このうち三社が、今年六月末に期限切れとなった労働協約の更新協議で、中身の改悪を打ち出したのが事の発端です。
■問題点は3つ
三千六百人余りが働く五社の労組でつくるロシア港湾労働組合サンクトペテルブルク港委員会(九一年結成、約二千三百人)のアレクセイ・モイセンコ委員長(48)によると、問題点は三つ。
(1)人員削減や作業ノルマの変更など労働条件の改定の際に「労働者の正当な意見を考慮する」義務の削除(2)作業での死傷への補償上限五十万ルーブル(一ルーブル=約四円)の三十万への引き下げや、福利厚生への補助の中止(3)平均月一万八千ルーブルの給与のインフレ率に見合った賃上げの拒否―です。
■人命を半額に
モイセンコ委員長は「人の命を半額にするのも許せないが、第一の点は、労働者の権利、労組の地位にかかわる原則問題」だと強調します。まだリストラ案は出ていませんが、「協約の改悪は経営者の好き勝手を許すことになる」と警戒します。
背景には、プーチン政権登場後の二〇〇二年、労働法の「労働者の意見考慮」義務が、勧告・努力規定に格下げされたことがあります。
政府と協力関係にある独立労組連盟とは一線を画し、港湾労組などを傘下にもつロシア労組連合のオレグ・バビッチ副議長は「港湾労組のような協約を持つ組合はまだ少ない。これまでの成果の切り崩しを狙う今回の動きは、労働者全体への攻撃」だと位置付けます。
労働協約の改定交渉を拒否した経営者側に対し労組は七月末、一時間の時限ストで抗議。
しかし経営者側は、市内の地下鉄で配布される無料の週刊新聞(四十万部)に、「三社の労組の活動は外国同業者を資するだけ」などと攻撃する広告を二回にわたり掲載。労組事務所の電話を止め、事務所の明け渡しも要求しました。
これに対し労組は今月十二日に臨時大会を開き、無期限ストの準備を開始。少なくない非組合員もストへの同調を表明、すでに協約の更新を勝ち取った二社の労組が全面支援に回っています。〇二年に長期のストを打った米・カナダの港湾労組をはじめ、各国からの連帯メッセージも続々と届いています。