2005年8月18日(木)「しんぶん赤旗」
主張
宮城沖の地震
「公共性」に揺らぎはないか
宮城県沖を震源とする地震は、宮城の震度6弱をはじめ、東日本の広い地域で強い揺れになりました。津波注意報も宮城県に出され、石巻市鮎川で〇・一メートルの津波が観測されました(一時間半後に注意報解除)。
この地震で、六十人を超す重軽傷者、数百棟の家屋の被害がでています。盆休みの帰省ラッシュの最中で、多くの人が足止めされました。
日本共産党は、ただちに市田忠義書記局長を本部長とする対策本部を設置し、十七日、副本部長である高橋ちづ子前衆院議員が宮城県に入り、被害状況を把握して対策をたてるために奮闘しています。
■公共施設でのけが
今回の地震で、一カ所でもっとも多くのけが人が出たのは、仙台市泉区松森にある「スポパーク松森」です。プールの天井が落下して遊泳中の人などにあたり、二十六人がけがをしました。
「スポパーク松森」は、七月にオープンしたばかりの仙台市の施設です。約五ヘクタールの敷地には、フットサル場、テニスコート、ゲートボール場などもあります。仙台市としては初のPFI方式の施設だという点でも注目されていました。PFI(Private Finance Initiative)は、公共施設整備を民間企業にゆだねるやり方で、「スポパーク松森」も、施設建設や運営を、松森PFI株式会社が市に代わって行っています。
多くの市民が利用する公共施設で、天井落下によってけが人を出したことは、重大です。
「スポパーク松森」は、隣接する市のごみ焼却施設・松森工場の余熱利用関連施設です。同工場は、談合疑惑の中で建設業者がきまったうえ、業者の不適切な施工・運転管理で事故になり、本格稼動が遅れました。その点について、仙台市長が、「市としての適切な対応がなされなかった」ことをわびたばかりです(九日)。「スポパーク松森」への市の対応はどうであったのか、PFI方式で責任や監督があいまいになった点はないのかどうか、厳しく問われます。
公共施設の建設・運営でも、住民の生命、安全を守る立場を貫くことが求められており、その点に揺らぎがあってはなりません。
公共性の発揮という点では、新幹線の復旧の遅さや、足止めをくった乗客への対応に疑問を感じます。
東北新幹線は、地震発生から約十時間も運転見合わせが続き、ダイヤの乱れは翌日まで続きました。列車に長時間かんづめにされたり、駅まで線路を歩かされた乗客もいます。盆の帰省ラッシュの最中であっただけに、被害は甚大です。
運転再開のためには、安全性を十分に確かめなければならないということはよくわかります。ただ、JR東日本は、昨年の中越地震の際、脱線した上越新幹線・とき325号の乗客を、四時間も、余震で揺れ続ける車中に留めおいたうえ、夜間、長岡駅まで七キロメートルも歩かせました。そうした教訓を生かすなら、地震が起きた後に、乗客の不安と不便をもっと小さくする対応があってしかるべきでしょう。
■いつでも、どこでも
日本では、いつでも、どこでも、地震と遭遇する危険があります。そのわりには、備えが万全とはいえません。一九七八年の宮城県沖地震、二〇〇三年の宮城北部地震で大被害を出した宮城県でも、今回のようなことがあります。
全国的に、地震防災対策を強めることが切実に求められています。