2005年8月12日(金)「しんぶん赤旗」

主張

日航機墜落20年

「安全の原点」に立ち返って


 日本航空ジャンボ機が群馬県上野村の御巣鷹の尾根に墜落し、五百二十人の尊い命が奪われた事故(一九八五年)から十二日で二十年を迎えました。悲惨な事故を繰り返さないため「御巣鷹は安全の原点」です。

 しかし日航はいま、トラブル続発で事業改善命令を受けながら、事態は改善されていません。全日空のトラブルも少なくありません。日本の「空の安全」が脅かされています。

■教訓を風化させるな

 墜落事故の反省に立って日航は、絶対安全の確立、労使関係の安定、公正明朗な人事、現場第一主義を掲げました。新町社長も国会で「覚えてございます」と確認し「安全の原点」は「御巣鷹山のこの事故にある」と答弁した(四月二十日)ように、風化させてはならない教訓です。

 ところが日航では、安全運航にとって要となる整備、運航、客室の各部門でトラブルが相次ぐ深刻な現状にあります。事故の反省に背を向け、安全を置き去りにして競争優先、利益優先に走っているからです。

 「安全確保の生命線」といわれる整備部門は、ボーイング社の修理ミスが事故原因とされたこともあり、自社整備を強調していました。しかしその後、コスト削減のため下請け委託やシンガポール、中国など海外工場への委託を進めてきました。

 自社整備率は一九九〇年度56%から二〇〇二年度26%へと大幅低下しました。海外整備の後、整備ミスが見つかるなど安全上も大問題です。

 乗客の命を預かる運航乗務員は、外国を含め他の航空会社に類を見ない過酷な勤務にされています。国際線の二人乗り交代要員なしの乗務時間は、九三年に最長九時間から十一時間に延長(一回着陸)されました。過重な勤務は安全性を低下させます。勤務改悪は無効と訴えた裁判で東京地裁、高裁も無効と認めました。会社は上告を取りやめましたが、判決を反映した勤務にしていません。

 保安要員として大事な役割をもつ客室乗務員には、賃金の低い契約制を大量導入しました。新人が多数を占める編成もあります。カナダでのエールフランス機炎上事故で一人の死者も出さず脱出できたのは客室乗務員の対応が適切だったからです。安全軽視の人件費削減は無謀です。

 過密ダイヤのもとで安全より「定時運航」だけを優先することは、トラブル多発の要因になっています。余裕時間がないため、整備・修理も当面の飛行に支障がなければ次に持ち越すことが横行する状況です。

 運航を直接担う現場の声をよく聞き、名実ともに安全優先の経営に転換すべきです。五千九百人を削減する中期事業計画は見直すことです。

 政府が、墜落事故への反省なしに競争と効率を優先する航空の規制緩和を進めた責任も問われます。

 八五年以降、政府保有の日航株を放出し完全民営化したのをはじめ、路線への新規参入や運賃の規制を緩和して競争をあおり、安全にかかわる規制も次々に緩和して、効率優先、営利優先の経営を促進しました。

■絶対安全の誓い新たに

 「いつ大事故が起きてもおかしくない」といわれる現状は放置できません。大事故を起こせば、取り返しのつかない犠牲を生み出し、航空会社の経営の基盤も危うくなります。「空の安全」を確立することは、航空会社の社会的責任です。

 政府は規制緩和万能の政策を改め、安全にかかわる規制は強化すべきです。いま一度「安全の原点」に立ち返り、絶対安全の誓いを新たにすることこそ求められています。


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