2005年8月9日(火)「しんぶん赤旗」

「延命カード」と自民政治の破たん

政治部長 山本長春


 その時、議場ひな壇に一人座っていた竹中平蔵郵政民営化担当相は、唇をかみしめ一礼しました。八日の参院本会議。郵政民営化法案が大差で否決された瞬間です。

■参院否決の皮肉

 首相官邸から出てきた小泉純一郎首相からも笑みは消えていました。四年余り前、首相就任の時の得意満面ぶりとあまりにも大きな落差でした。しかも、就任直後の「小泉ブーム」から参院選で「自民圧勝」をもたらした、その参院が党内造反で法案を否決。なんと皮肉なことでしょう。

 「郵政法案の否決は小泉改革の否定だ」。小泉首相はこう語ってきました。郵政民営化は首相自身が「改革の本丸」と位置づけてきたからです。しかし、それは国民世論とはあまりにも乖離(かいり)していました。国民が切実に求めているのは社会保障充実や景気・雇用対策などであり、郵政民営化など望んでいなかったのです。

 だいたい、法案をだしてきたのが国会開会から三カ月もたった四月下旬です。法案成立のめどがたたないとなるや、自民、公明は会期の五十五日間延長を強行。党内反対派を「解散カード」を使って脅す。やり方も強権的でした。

 郵政法案の否決は、自民党の狭い内部抗争ですまされる問題ではありません。国民が「小泉改革」に、はっきりとノーの声をつきつけたことを意味するのです。

■より根本的には

 より根本的には、法案否決は、自民党政治そのものの破たんを象徴しています。

 小泉首相は、「自民党をぶっ壊す」をうたい文句にして登場しました。「改革なくして成長なし」「米百俵」式の端的な言葉を連発し、内閣発足当時は支持率八割台を記録したこともあります。しかし、それは、危機に陥っている自民党の「破壊」をスローガンにすることによって、長期低落の国民の支持をなんとかつなぎとめようという苦肉の「延命カード」にすぎませんでした。

 その素顔は早くもあらわになりました。首相が好んで使った「今の痛みに耐えて明日をよくしよう」。実際に国民にもたらされたのは、サラリーマン本人医療費の三割負担導入、年金・介護保険の改悪など「痛みの押し付け」だけ。明日に用意されているのは庶民大増税です。しょせん小泉政治には、国民の痛みに心を寄せる姿勢などかけらもありません。

 そしてイラクへの自衛隊派兵、靖国神社の参拝強行、改憲作業の指示という世界平和の流れへの逆行でした。小泉語録も、いまや「人生いろいろ、会社もいろいろ」など退廃のきわみです。

 「変人以上だな」。六日夜、首相に解散回避で説得にいった森喜朗前首相は、さじを投げました。しかし、その変人を担いで「小泉改革」を選挙公約にし、推進してきたのは自民党ではなかったか。その結果が自民党を内部分裂させ、日本の外交・内政をここまで行き詰まらせたことを思い知るべきです。

 総選挙に向け「自民対民主」、郵政民営化「賛成派対反対派」の“対決”があおられようとしています。しかし、それで自民党政治からの脱却はできるのか。小泉政治の終えんにいたるまでに払った「高い授業料」を、形を変えてまた国民が払うわけにはいきません。


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