2005年8月2日(火)「しんぶん赤旗」

解説

「戦争の根拠」づくりへ

自民党の改憲条文案


 改憲案を条文形式で発表したことは自民党の改憲案作成が大詰めを迎えたことを意味します。

■米の単独行動無制限に協力

 同条文第一次案では、現行憲法九条二項の削除と「自衛軍の保持」を明確にし、六項目にわたる詳細な軍事活動に関する規定が置かれ、「平和主義」を全面的に放棄する内容になっています。

 これまで政府は九条二項で戦力不保持を規定していたことから、武力行使を目的にした海外派兵や集団的自衛権の行使、国連の軍事活動への参加は許されないとしてきました。二項が削除され「軍」の保持を明確にすればこれらの歯止めは無くなります。

 しかも、自衛軍の活動の目的として「自衛」「国際社会の平和及び安全の確保のために国際的に協調して行われる活動」「我が国の基本的秩序の維持のための活動」の三つをあげています。「自衛」は集団的自衛権の行使を含むとされ、「国際的に協調して行われる活動」に自衛軍が参加できるというのですから、イラク戦争など米国の単独行動への協力をはじめ無制限な海外での軍事行動を許容するものです。

■1項も変質し海外活動宣言

 今度の自民条文案では、九条一項の戦争放棄の宣言も変質しています。「戦争その他の武力の行使…永久に行わない」とされて「放棄」という文言が消されたうえ、同時に「日本国民は…国際社会の平和及び安全確保のために国際的に協調して行われる活動に主体的かつ積極的に寄与するように努める」という「宣言」がそこに加わります。自民党は「二項は削除するが一項は残す」と言ってきましたが、一項の宣言が海外での武力行使を容認する内容になっています。

 こうして、現行憲法九条は一切の戦争の禁止と戦力の不保持という国家に対する軍事活動の禁止を定めているのに対し、自民新憲法案では逆に軍事活動の根拠を国家に与えるものになっています。現行憲法第二章が「戦争の放棄」であるのに対し、自民案では「安全保障」となっていることにもそれは象徴的に現れています。

■理念なき改憲前文案見送り

 また、第一次案では「前文」案の発表は見送られましたが、これは九条改悪先にありきという自民党の立場を露骨に示すものです。「前文」は憲法制定の根本目的や、憲法がよって立つ理念を明らかにするものです。それを示すことなしに条文の改定を先行させるというのは、まさに理念なき「改憲」であることを自ら認めたようなものです。

 人権制約の根拠に「公益及び公の秩序」を含めようというのも九条改悪とセットです。「公益及び公の秩序」は軍事的要請まで含む広い概念です。軍隊の存在と活動を認めることは、その障害となる国民の自由な活動の制限を許容します。 (中祖寅一)


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