2005年7月31日(日)「しんぶん赤旗」

ASEAN主導で平和

東アジア首脳会議の先頭に

友好協力条約への加盟拡大


 ラオスの首都ビエンチャンで二十五日から二十九日まで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)の外相会議をはじめとする一連の会議は、ASEANの繁栄をめざす地域統合、共同体づくりと、アジア全体の平和と協力、繁栄をめざす動きで、さらに一歩を踏み出すものとなりました。(ビエンチャン=小玉純一、鈴木勝比古)


■「操縦席に」

 今回の焦点の一つは、将来の東アジア共同体を展望した東アジア首脳会議(クアラルンプールで十二月に開催)の参加国、開催方法をどうするかでした。当初は、これまでのASEAN+3(日本、中国、韓国の三カ国)を構成する十三カ国の参加が決まっていましたが、ASEAN外相会議でさらにインド、オーストラリア、ニュージーランドの参加が正式に決まりました。

 注目されたのは、ASEANが東アジア首脳会議参加国の拡大を歓迎しつつ、首脳会議の「操縦席」に座ることを確認したことです。東アジア共同体に向けた流れの主導権を維持しようとするこの方針をASEANも、対話国十カ国との拡大外相会議も了承しました。

 首脳会議の開催方法については、ASEANと域外参加国による共同議長制や交互開催を求める意見があったものの、当面はASEAN加盟国が議長を務め、開催地はASEAN加盟国とすることを決め、ASEAN+3外相会議でもこれが確認されました。

 ライス国務長官に代わって今回の会議に出席したゼーリック米国務副長官はASEAN地域フォーラム(ARF)閉会後の記者会見で、外に開かれた形での東アジア首脳会議の開催を強調しました。しかし、「ASEANが操縦席に座る」ことは容認しました。

 「東アジア首脳会議のためにASEAN共同体を犠牲にすることはない」(ナタレガワ・インドネシア外務省報道官)というASEANの姿勢が際立ちました。

■豪州の変化

 東南アジア友好協力条約(TAC、一九七六年に成立)への加盟国がさらに拡大したことも大きな特徴でした。TACは東南アジア地域の平和、安定、協力の諸原則、とりわけ紛争の平和解決の原則を明記しています。

 ASEANがかつて「潜在的脅威」と見なしていた中国が一九九〇年代後半にASEANとの対話路線に転換し、TACに加盟(二〇〇三年)したことがその契機となりました。これまでにASEAN域外国では、パプアニューギニア、中国、インド、日本、パキスタン、韓国、ロシアが加盟、今回、モンゴルとニュージーランドがこれに加わりました。

 際立ったのは、オーストラリアの変化です。今回、同国は加盟の意思宣言を行い、国内手続きを経て十二月に加盟することになりました。昨年十一月のビエンチャンでのASEAN首脳会議の際には、ハワード首相はTACを「時代遅れ」だとして加盟を拒否していました。

 同首相は、ブッシュ米政権と一体の「先制攻撃戦略」を主張しています。そのオーストラリアが一年もたたないうちに加盟へと態度を変更しました。ASEANは共同声明で同国の加盟意思宣言を歓迎しています。ラオスのヨン報道官は本紙に対し「ASEANにとっても、オーストラリアにとっても利益になる」と語りました。

 オーストラリアの真意がどうあれ、TACを中心とした平和の潮流が周辺国に影響を広げる姿が浮かび上がっています。

■巧みな外交

 ASEAN対話国である米国や欧州連合(EU)は今回のビエンチャン会議を前に、ミャンマー政府による野党指導者アウン・サン・スー・チーさんの自宅軟禁などの非民主的政権運営を非難して、来年に予定されたミャンマーのASEAN議長国就任に強硬に反対しました。こうした外部圧力にどう対処するかは、ASEANの真価を問われる問題でした。

 結局、ミャンマーが「民主化の実現に集中するため」との理由で議長国を辞退し、ASEAN各国外相がこれを了承する決着となりました。「内政不干渉とASEAN共通の利益の両方を守ることが大切」とナタレガワ報道官が記者会見で指摘したように、原則を堅持して外部圧力を巧みに回避するASEAN流の対応と評価されています。

■影薄い日本

 日本の町村外相は国連改革のG4案とアフリカ連合案との調整のための「多忙」を理由に、ビエンチャン会議を欠席しました。ASEANの会議より日本の安保理入りを優先する外交姿勢はビエンチャン会議で日本の影をいっそう薄くしました。

 国連改革問題では、ASEAN外相会議が「常任理事国拡大問題が、包括的国連改革につながる重要な問題を薄めている」として、これに「不満」を表明した声明を発表。中国はこれを歓迎し、韓国は「心強く感じた」と発言しました。

 ASEAN側は国連改革の問題で、中国と日本の対立がASEANに持ち込まれ、各国間の相違を引き起こすことを懸念しています。小泉首相の靖国神社参拝をめぐる日本と中国、韓国との関係悪化にもASEAN各国は憂慮しています。

 東アジア共同体への動きが強まっている中で、ASEANは「日本はASEAN共同体、東アジア共同体に大きな貢献ができる」(ヨン報道官)と日本の役割を重視しています。日本がアジアの一員として、日米軍事同盟優先からアジアの平和、安定、協力をめざす自主的な外交路線に転換することが求められています。


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