2005年7月29日(金)「しんぶん赤旗」

健康被害が大問題

アスベストQ&A


 アスベスト(石綿)の健康被害が大きな問題になっています。どんな危険があり、なにが問題なのか。Q&A形式で考えてみました。(宇野龍彦)


■どんなもの

 Q アスベストってどんなもの?

 A 昔から石綿と呼ばれている、繊維状の鉱物です。蛇紋岩(じゃもんがん)系と角閃石(かくせんせき)系に大別され、角閃石系の青石綿、茶石綿はより毒性が強いことがわかっています。

 飛散すると空気中にただよい、目に見えません。発がん性があり、吸い込むと肺や胸膜、腹膜などからがんを発生させたり、肺の機能をそこなう石綿肺(じん肺)などになる恐れがあります。

■どこに使用

 Q どんなところに使われているの?

 A アスベストは熱に強く、燃えにくい、電気を通さない、薬品に強く腐食しない、曲げる力や引っ張りにも強い、安価、といった特徴があります。このため、「奇跡の鉱物」といわれ、工業用から電気製品、日用品にいたるまで、約三千種にのぼる広い範囲で使われました。とくにアスベストの九割は、天井・壁材、スレート瓦など建築材として使われています。

■政府の対応は

 Q そんな深刻な被害が出るのに、日本政府はどうしたの?

 A アスベストが「発がん物質」と米国で指摘されたのは一九三五年とかなり早い時期でした。六四年には米国の「ニューヨーク科学アカデミー」の国際会議で、肺がん、中皮腫を発生させるとする警告が「勧告」として出されました。七二年には国際機関である世界保健機関(WHО)や、国際労働機関(ILО)がそれぞれ危険性を指摘しました。

 しかし、日本では六〇年代の高度成長期から建物や製造現場でアスベストが大量に使われ、国際的にも危険がはっきりしてきた七〇年代から九〇年代初めにかけて、アスベスト輸入のピーク期を迎えました。三〇年代から総計九百九十万トンが輸入されています。

 日本政府は、七一年にアスベスト製造加工工場での吸引防止策などをもりこんだ特定化学物質等障害予防規則をつくりましたが、これは工場内だけ。七二年には、旧環境庁も委託調査で工場周辺住民の健康被害を認識していましたが、八九年まで排出基準をつくりませんでした。やっと七五年になって、アスベスト吹きつけを禁止しました。しかし、すでに使われたアスベストの撤去はおこないませんでした。

 九五年になって毒性の強い青・茶石綿を製造禁止にしましたが、これも回収はおこなわれていません。政府がアスベストを原則禁止にしたのは〇四年になってからです。それでも「代替品のないもの」は除かれ、完全禁止は〇八年まで先送りにされています。

 とくに建材では、ことし三月末時点でも、繊維強化セメント板七万七千枚、屋根用化粧スレート九千平方メートル相当などの在庫があります。二〇〇四年十月以前に製造したものは経過措置として販売が認められています。

■外国の場合は

 Q 外国ではどうなの?

 A 八〇年代にはすでにヨーロッパ諸国で相次いで全面使用禁止になりました。米国でも八九年からアスベストの生産・輸入を段階的に規制しています。

■救済と予防は

 Q 被害者救済と被害予防にはどんなことが必要?

 A まずアスベストを一刻も早く全面禁止にすることです。そして今後、アスベスト建材を使った建物を解体するときには、アスベストを周辺に飛散させない、作業で吸い込まない対策も必要です。

 以前にアスベストを吸い込んでしまっている建設労働者や退職者、住民などにたいしても、肺がんや中皮腫の早期発見のための検診、労災認定、補償を迅速化し、拡充することが国に求められています。たばこによる肺がんなどとされてきた死者も患者の職歴やアスベスト特有の胸膜肥厚斑(ひこうはん)を調べることも必要です。専門医は「今後は過去にアスベストを吸い込んだことがないのかも、診断時に調べるべきだ」と指摘しています。

■どんな病気に

 Q アスベストでどんな病気に?

 A いま一番問題になっているのは、長い潜伏期後に発病する肺がんと胸膜、腹膜からのがんである悪性の中皮腫です。中皮腫はとくにアスベストとの関係が非常に深い。日本では、政府が統計を取り始めた一九九五年からの九年間で中皮腫で六千六十人もの死者が出ています。吸い込んだアスベストが肺や胸膜などの細胞に突き刺さり、がんを発生させるとされています。

 潜伏期は肺がんで十年以上、中皮腫では三十―四十年以上もあります。吸い込んだ量が多いほど、発病の危険性は高くなります。しかし、少ないからといって安心はできません。旧労働省の専門家会議がまとめた報告書(一九七八年九月)は「中皮腫は少量でも発生する可能性がある」と指摘しています。

 ニチアス工場の労働者の発病例では、一年間のアスベスト作業で発症しています。労働者の服についたアスベストから家族や工場周辺住民にも被害が及ぶ場合があります。とくに建設関連労働者に深刻な被害が出ています。

 アスベストを吸い込んだ可能性の高い工場周辺の住民や、建設労働者やその家族などは定期的な健康診断で肺がんなどを早期につかみ、初期治療することが大事と専門医は指摘しています。


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