2005年7月19日(火)「しんぶん赤旗」

イラクとイラン和解

「対テロ」での協力確認

戦火を交えた両国首脳


 【カイロ=小泉大介】イランを公式訪問しているイラクのジャファリ首相は十七日、テヘランでハタミ大統領と会談し、関係改善を宣言しました。一九八〇年から八年にわたり戦火を交えた両国の首脳同士が和解を表明したのは初めてです。

 両首脳は「対テロ」での協力を確認しました。さらにジャファリ首相が滞在する十八日までに、安全保障だけでなく経済協力などでも協議を行い、合意文書に調印する見込みです。

 イラク最高指導者のイラン訪問はイラン・イラク戦争ぼっ発後初めて。両国は昨年九月に外交関係を再開しましたが、平和条約締結には至っておらず、ジャファリ首相は今回の訪問に十人以上の閣僚を伴うなど並々ならぬ意欲を見せました。十六日に同首相を迎えたイランのアレフ副大統領も「われわれはイラクを兄弟と考えている」と歓迎しました。

 現地からの報道によると、ジャファリ首相はハタミ大統領との会談で「フセイン(元イラク大統領)がとった行動をわれわれは知っている。彼はイラク国民の真の代表ではなかった」と述べ、フセイン政権の戦争責任を示唆しました。この問題では国連がイラクの開戦責任を認めています。

 会談後、ジャファリ首相は「無実の人々の命を無視するテロに対処する共通の立場が必要だ」「イスラムが今までずっと平和と慈愛の宗教であったことを、われわれは世界に証明しなければならない」と指摘。ハタミ大統領もイスラムの名によるテロ行為を非難し、「イランはイラクの再建と治安確立のため最善を尽くす」と述べました。

■解説 米のイラン敵視の中の和解

 イランとイラクの和解確認は両国関係にとって歴史的というだけではありません。事実上イラク占領を継続する米政権がイラン敵視政策を強めるなかでのこととして注目されています。

 四月末に発足したイラク移行政府は、人口の六割を占めるイスラム教シーア派の「統一イラク同盟」が中心です。ジャファリ首相が所属するダアワ党やイラク・イスラム革命最高評議会もシーア派。シーア派を弾圧した旧フセイン政権時代には、同じシーア派を国教とするイラン政府の支援を受けて、イランで反政府活動をおこなっていました。イラクのシーア派最高権威であるシスタニ師はイラン北東部マシャド出身です。

 これらの歴史や、イラクの治安改善、復興に隣国の強力な支援が必要な事情からすれば、関係改善の動きは当然とみえます。しかし、米国のブッシュ政権はイランを名指しで「悪の枢軸」と非難し、軍事攻撃の威嚇もおこなっています。米政権の圧力下にあるジャファリ首相にとって大きな決断が必要だったことは想像に難くありません。

 今月初旬にはイラクのドレイミ国防相がイランを訪問し、旧フセイン時代の対イラン政策を謝罪するとともに、イランを攻撃するために他国にイラクの国土を使用させることはないと表明したと伝えられています。米国の対イラン威嚇を念頭に置いていることは明らかです。

 イラク占領を足がかりに中東全体の支配をめざす米政権は表向き平静を装っていますが、「隣国はイラクの内政に干渉してはならない」(十三日、ハリルザド新駐イラク米大使)とイランをけん制しています。

 今後、米政権による巻き返しとイラク政府への圧力の強まり、またイラクの少数派であるスンニ派勢力の反発が予想されます。

 (カイロ=小泉大介)


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