2005年7月13日(水)「しんぶん赤旗」

主張

アフリカ支援

必要なところに届いているか


 小泉首相は、主要国首脳会議(G8サミット)で、発展途上国向けODA(政府開発援助)を五年間で百億ドル(一兆二千億円)増額、アフリカ向けを三年間で倍増すると表明しました。年平均では、一九九五年の百四十五億ドルには届きませんが、百十億ドル程度になる計算です。アフリカ向けは、二〇〇三年五億三千万ドルが、三年後、九五年の十三億三千万ドルを上回る十六億ドルになります。

 深刻な飢餓・貧困に苦しむアフリカへの援助は緊急の課題ですが、必要なところに届くようになっているでしょうか。

■ 人道援助中心へ

 世界の発展途上国人口のうち七億九千万人が栄養不足です。このうち、サハラ以南は一億八千万人、23%を占めます。最低の食糧、栄養が取れるかどうかの瀬戸際にあります。

 八〇年代に入って慢性的な干ばつが加わり、こんにちの危機的状況になっています。国連の必死の呼びかけにもかかわらず、事態が好転しません。経済大国の積極的とりくみが決定的に重大になっています。

 しかし、米国や日本は、飢餓・貧困救出を正面にすえたとりくみをしているとはいえません。

 米国のODAは、米軍事戦略上重要な国向けが中心です。ブッシュ政権は、これに加え、米国的「政治・経済改革」を実施する国に援助する方針をうちだしました。しかし、条件が厳しいため実施はわずかです。

 日本のODAは、米国の戦略補完と海外進出の日本企業への奉仕を中心としています。経済活動のための運輸、通信、河川、ダムなどの整備・建設を重視しており、食料や医療、衛生などの人道援助の比重は小さくなっています。

 日本の援助実績をみると、ODA総額では、援助実施国から成る開発援助委員会(DAC)二十二カ国のなかで上位ですが、食料援助は最低となっています。また、最貧国である「後発発展途上国」向け援助の割合も、最低の二十位前後が長く続いています。

 約五十のアフリカ諸国のなかでも、二十六カ国が世界でもっとも貧しい重債務国です。しかし、その二十六カ国向けに出しているODAは、九四年は、二国間ODA総額の10・3%を占める九億八千万ドルでしたが、二〇〇三年には四億一千八百万ドルと半分以下に減っています。二国間ODA総額は、九四年に比べ〇三年は37・9%減っています。二十六カ国向けの削減率は57・3%ですから、二十六カ国向けの削減率の方が高くなっています。

 小泉内閣が、アフリカ向けODAの増額を表明したのは、国連安保理常任理事国入りに必要な票を得るためです。「国益」むきだしのODAでは、真の信頼は得られません。

 米国貢献、大企業本位、狭い「国益」優先から人道援助中心のODAに転換することが必要です。

■ 平和的生存権の保障

 日本国憲法は、前文で、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と、平和的生存権の保障をうたっています。ODAによる支援は、こういう方向で行われる必要があります。

 「国連ミレニアム・プロジェクト」は、一月、貧困対策に必要な四百八十億ドルは、「全世界の軍事費の5%にすぎない」と指摘しています。

 軍事力の強化ではなく、平和的手段によって困難の打開に寄与することこそ、国際社会から求められていることです。


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