2005年6月27日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

障害者支える 小規模作業所

地元で 働きたい 自立したい


 障害者の働く場、活動の場として、「わが子の自立」を切実に願う親の共同の事業として、地域のなかで生まれ、運営されている小規模作業所(別項参照)。厳しい財政運営のなか、知恵を出しあい、力をあわせてがんばっている札幌市北区のNPO法人陽だまりが運営する「東米里(ひがしよねさと)村」と大分市の「夢ひこうせん」を紹介します。


生協や行政から仕事 袋詰め、分別、名刺作りも

大分市 夢ひこうせん

 「おはよ〜」。大きな声で、玄関を走り抜け、作業室へ向かう仲間がいます。送迎車両が着くと続々と仲間たちがいろんな表情でやってきます。大分市の南部に位置する「夢ひこうせん」。約四十人の身体、知的、精神障害の仲間たちが通い、働いています。「夢ひこうせん」の一日を追ってみました。

 仕事は、六、七人で構成する六つの班でしています。一人ひとりの役割を認めあい、お互いに支えあいながら仕事をしたいからです。そして、地域の方々の協力をいただきながら連携し、取り組んでいます。

 地域の生協とはいろんな共同をすすめています。甘夏の袋詰めの作業をするために創作班の仲間が生協へ向かいます。また生協の店舗で回収した卵パックをリサイクルできるものとできないものに分別し、それを箱詰めし、「納品」(生協へ持って行く)します。この仕事はリサイクル班が担当しています。

 パソコン班は、近くの事業所から注文いただいた名刺の作製をしています。午後からは暑中見舞いはがき印刷の営業にみんなで行きます。

 県教育委員会からの委託の「慶弔板」の製作や木のおもちゃづくりに忙しい木工班、縫製班は作品展での販売をめざして織物やふきんの製作など、仲間たちの表情は働く喜びに満ちています。

 喫茶室では、施設の運営について中心的な役割を担う利用者代表で構成する運営委員会が行われています。昼休みには、キャンプ実行委員会や夏祭り実行委員会の話し合いがにぎやかです。

 「わたしたちは利用者負担増に反対です」。食堂にはこんな横断幕が掲げられています。「利用者負担増に反対する共同行動委員会」には法人理事、利用者運営委員会、家族会、労働組合が参加しています。「障害者自立支援法案」の「応益負担」の導入などに反対し、国会議員への働きかけなどみんなでがんばっています。(「夢ひこうせん」施設長・曽我淳史)


自然の中で栽培、販売 目標は最低賃金の確保

札幌・白石区 東米里しいたけ村

 NPO法人陽だまりが運営する「東米里(ひがしよねさと)しいたけ村」は二年前、障害者の就労の場として、札幌市白石区に誕生しました。

 現在、メンバーは十代から二十代の十五人です。どんな障害があっても、働きたいと願う人はすべて受け入れています。

 作業は原木しいたけの栽培・販売です。一万本の原木を相手に、収益をあげるために、みんな早朝から働き、原木と悪戦苦闘しています。

 現在、養護学校高等部を卒業した子の進路はほとんどが小規模作業所に在籍することです。しかし、作業所の多くは利用料もかかり、作業をしても利用料を上回る賃金をメンバーに支給することができません。

 「東米里しいたけ村」はメンバーから利用料は徴収していません。めざすは最低賃金の確保です。現在、日給千円を支給しています。

 障害があっても自然のなかで「ものづくり」をするという労働を通じて、仲間を信じあえる関係が育ち、地域に根づくことで人間関係を深め、収入を得ることで自立生活ができます。これが私たち作業所の目標です。(NPO陽だまり代表・武藤光恵)


慢性的な運営資金不足 「自立支援」法案で負担増に

 小規模作業所は、共同作業所、小規模授産所、福祉作業所などと呼ばれ、その経営形態も任意団体、社会福祉法人、NPO法人などとさまざまです。

6千カ所設置9万人が利用

 厚労省が初めて調査した一九八一年当時は六百三十八カ所でした。「きょうされん」(旧・共同作業所全国連絡会)の調査によると、現在、その設置数は約六千カ所を数え、一カ所当たり十五人前後で、利用者数も約九万人にのぼっています。

 増え続けている要因について、「きょうされん」事務局長の多田薫さんは「障害のある人たちが働いて自立した生活をしようと思っても、受け入れる社会的な整備がきわめて貧しいからです。一般企業の雇用率も低く、結局は親たちやボランティアなどの手で自主的に開設するというのが多くあります。それでも見通しがたたず、自宅待機というケースも多い」と指摘しています。

 作業所を開設したあとの最大の問題は、慢性的な資金不足や財政基盤の弱さです。現在、国の制度として「110万円(年額)補助金制度」と地方自治体による独自補助事業があります。しかし、国は法的な「小規模通所授産施設制度」(二〇〇一年度施行)の発足を機に、共同作業所への補助金を削減、さらには「小規模通所授産施設」にたいしても二〇〇四年度に削減しました。一方、地方自治体のほうはそれぞれの姿勢や「財政事情」から地域間格差が問題になっています。

自立に逆行と関係者から声

 障害者に新たな問題を投げかけているのが「障害者自立支援法案」です。福祉サービスの利用負担を現行の所得に応じた「応能負担」から定率の「応益負担」にしようとしており、関係者からは「自立支援ではなく自立に逆行する」と不安の声があがり、地方議会でも「負担増でなく改善を」との決議がつづいています。日本共産党国会議員団は同法案の撤回を求めています。

 多田さんは「障害の程度もさまざまであり、多様なニーズにこたえた整備を充実させること、そしてなによりも、障害者が一人の人間として、最低生活基準の生活ができる所得保障を確立することです。年金をみても、『生活保護』の水準にも達しないわけですから」と話しています。(奈)


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