2005年6月27日(月)「しんぶん赤旗」

主張

サラリーマン増税

酷税が人間性を押しつぶす


 政府税制調査会(首相の諮問機関)が打ち出したサラリーマン大増税計画に、批判が高まっています。

 政府税調の報告書によると、〇五年度の税制改定で半減した定率減税を、〇六年度には廃止するとしています。両年度の家計負担増は三・三兆円に上ります。

 同時に数年がかりの課題として、所得控除を全面的に見直して、縮小・廃止することを掲げています。

■年収500万で42万円増税

 政府税調は、五年前の中期答申で「複雑な制度を簡素化する」として諸控除の見直しを打ち出していました。今回の報告書で「制度が相当複雑化している」と強調しているのは、「簡素な税制」に逆行していると印象付けるためです。

 しかし、所得税は、それぞれの負担能力に応じて課税するようになっているところが長所であり、それを「複雑」だと切り捨てようとするのは間違いです。負担能力に応じた課税を実現する手段となっているのが累進税制であり、各種の控除です。

 月収が同じでも、独身で扶養家族のいない人と、子どもを持つ人、重病の家族を抱える人などでは負担しなければならない費用が違います。その条件を無視して課税すれば、消費税のように、低所得者や困難な状況を抱えた人に、より重い負担を強いることになります。

 さまざまな控除は、それぞれの人の経済的な事情に配慮し、公平を期すために設けられています。その結果、複雑になったからといって諸控除そのものを一律に縮小・廃止するのは本末転倒です。政府税調自身が「税制の基本原則の中で最も大切なもの」と位置付けてきた「公平」の原則を破壊します。

 見過ごせないのは増税規模です。

 報告書は配偶者控除や扶養控除、十六歳から二十二歳の扶養親族にかかわる特定扶養控除などを明記して、見直しを主張しています。

 所得の種類に応じた控除については、勤め人にかかわる給与所得控除、退職金控除の縮小を打ち出すとともに、自営業者にかかわる事業所得の徴税強化も盛り込みました。

 給与所得控除の半減だけで五兆円の増税です。定率減税の全廃と合わせて「十兆円台前半規模の税負担増となる見込み」(日本総合研究所)とする試算もあります。

 給与年収が五百万円の四人家族の場合、増税額は四十二万円、給料一カ月分が軽く吹き飛ぶ増税です。

 報告書は庶民の税負担を引き上げるために、所得税の四つの税率区分(10、20、30、37%)の適用範囲の見直しを掲げています。とくに最低税率10%の範囲を狭め、大半の人に税率20%を適用する考えです。

 「わが国の課税最低限は主要国中最低の水準となっている」と報告書も認める通り、日本の所得税制は低所得層に厳しくなっています。

 その上に、低所得層ほどつらい所得増税を迫り、さらに政府・与党は消費税の増税まで計画しています。

■格差拡大と生活不安

 一方で、富裕層や大企業の税負担軽減だけは続ける構えです。引き下げ続けてきた所得税の最高税率や株式売却益の減税、大企業の減税には手を着けようとしません。

 日本の貧困率は主要国で最悪の水準となり、若者の間でも貧富の格差が広がっています。生活不安を抱える国民が増加し、年に三万もの人が自殺しています。

 庶民への残酷なまでの大増税は、社会の亀裂を深め、人間性を踏みにじる暴挙です。


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