2005年6月20日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

安心・安全 旬が魅力

地場産野菜をどうぞ


 農家が地場産の農作物を、行政の協力をえて販売所で、直売する取り組みがすすんでいます。各地の例から、岡山県吉備中央町と、大阪府河南町の例を紹介します。


岡山市内に直売店 町、出荷団体が会社設立 岡山・吉備中央町

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 午前十時すぎ、岡山市奉還町商店街にある「加茂川ふるさと交流プラザ」に野菜を満載したワゴン車が到着すると、買い物客が待ちかねたように買い求めていきます。

 「奉還町の中でも、ここが一番にぎわっているんじゃない。けさか、きのうの夕方とれた、新鮮な野菜だからね」というのは客の一人、早瀬巌さん(67)。産地直送の野菜が到着する午前八時と十時ごろ、「車から下ろすと同時に、取り合いのようになる」といいます。

 幅四メートル、奥行き十メートルの店は、たちまちレジを待つ行列であふれました。

年商1億円超

 岡山県加茂川町(当時)が同市内にアンテナショップ「ふるさと交流プラザ」を開設したのは二〇〇〇年三月。年、一億一千万円の売り上げを続けています。

 消費者にとってその魅力は―。前出の早瀬さんはいいます。「その季節の旬の野菜を食べられるからね。タケノコも、モウソウ、マダケ、ハチクと、時期をおって出てくるから、二日に一回は買って食べてるよ。タラの芽やゼンマイ、珍しいものもあるから」。この日は店頭で大粒の梅を選び、量が足りないと八キロを予約していきました。

 「タマネギの丸いのと、ひらべったいのはどう違うの」「バーベキューの炭、入れといて」。買い物客と店員とのやり取りも、スーパーでは見られない光景。店にくれば、おいしいラッキョウの漬け方も教えてもらえます。

主力はお年寄り

 加茂川町は昨年十月、賀陽町と合併して吉備中央町に。それを機に、旧町内の全域に広がった四十九の出荷団体や旧町が出資し有限会社を設立。町内の「道の駅」とあわせて、この「交流プラザ」を運営しています。

 小山和昌社長も「プラザの成功は、二十年前から、はぐくまれてきた村おこし団体の協力があるから」といいます。

 その有力な出荷団体の一つに農民連(農民運動全国連合会)に加盟する「加茂川町産直野菜生産者組合」があります。会長を務めるのは日名義人さん(日本共産党吉備中央町議)。七年前に大阪からUターンした日名さんが、地域の農家と協力して新日本婦人の会の産直ボックスを始めたのがきっかけで設立され、いまも新組合員を迎え、出荷を増やしています。

 組合の主力はお年寄りたち。「退職して、少しでも家計の足しになればとやってみたら、これが楽しい。低農薬でおいしい野菜を、消費者に喜んでもらえるから」(七十一歳の男性)と生きがいにもなっています。

 「お年寄りが一日千円の出荷をしても月に二万数千円、年金の足しになる。お医者にいってる場合じゃないと、畑仕事を楽しんで」と「交流プラザ」の河野浜子店長。「その思いを背負ってるから、私たちも真剣なんです」といいます。(岡山県・宮木義治)


補助受け「道の駅」活用 土日の朝市、近隣から1400人 大阪・河南町

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 「地元の農家がつくった野菜だから新鮮なんです」と毎週、土日曜の朝市にくるという男性(65)=河内長野市=は言います。「道の駅」を活用して農村振興、地域の情報交換、発信基地に―と大阪府河南町の「道の駅・かなん」が注目を集めています。

生産者を明記

 土日の朝市は、午前八時半から。平日は午前九時からです。河南町だけでなく、近隣の富田林、河内長野、松原市などからも車で次々に主婦や中高年の人たちが訪れます。平日約四百人、土日は千四百人余にのぼります。

 ミズナス、キュウリ、トマト、エダマメ、ニンニク、ジャガイモ、ハクサイ。四十品目あまりの新鮮な野菜がところせましと並んでいます。特徴は商品にはられたシール。価格とともに生産者の名前が印刷されています。

 客の中には、シールの名前をみて野菜を買っていく人もいます。「完全有機無農薬野菜というわけにはいきませんが、環境にやさしいエコ農産物を生産していきたい」と「駅長」の阪上勝彦氏(62)はいいます。

 同駅は、昨年四月二十九日に同町大字神山の国道309号沿いにオープンしました。七千五百十三平方メートルの敷地に大型車三台、普通車四十八台、身障者用一台の駐車場、トイレ、物品販売のできる河南町農村活性化センターを併設しました。

 道の駅は国の補助を受け、活性化センターは府の補助を受けて実現。管理運営は「農事組合法人かなん」(代表理事・福田清隆氏)が委託を受けています。

 同法人の専務理事でもある阪上さんは、法人の取り組みの積極面について(1)地域農業の振興(2)会員に明るさ、社交性が生まれる(3)河南町の玄関口にある情報発信基地をめざす―を挙げました。

 会員は現在百十三人。そのうち農産物や生花などを出品するのは平均八十農家ほど。定年退職後、親の農業を引き継いではじめた人もいます。

 「市場に出すには少ないが自分だけでは食べきれない」(阪上駅長)農産物を出品する農家もあります。

 「農業を見なおして生産者も消費者も安全安心な農産物を賢くつくって食べるようにしたい。一石二鳥にも三鳥にもなります」。阪上駅長は目を輝かせます。

ヒット企画に

 同法人は町内五小学校の学校給食の食材も供給しています。日本共産党の力武清町議は、活性化センターを活用した取り組みを支援するとともに、町議会で中学校でも学校給食に地元の食材を使うように町長にもとめています。

 力武議員は「河南町の農業も後継者が大きな問題です。この道の駅を使った活性化センターは町としては久しぶりのヒット企画です。福祉バスを道の駅まで巡回できるようにするなど町民の利便を考えた方策も必要だと思います」と話しています。(嶋田昇)


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