2005年6月9日(木)「しんぶん赤旗」

主張

7年連続3万人台

なぜ自殺の悲劇減らないのか


 二〇〇四年の自殺者は、警察庁調べで三万二千三百二十五人を数えます。最悪の失業と倒産のもとで激増した自殺者は「雇用は改善された」「倒産は減った」という政府の宣伝にもかかわらず減っていません。

 過去最多の〇三年に比べれば二千人余の減少ですが、七年連続で三万人台が続いています。一日平均八十九人が自殺する現状は異常です。この七年間の合計では、二十二万七千人を超え、中小都市が一つ消えた勘定になります。

高失業と生活苦の現実

 自殺者が減らない背景には、高失業や経営難、生活苦が暮らしと営業に重くのしかかる現実があります。それは、経済・生活問題を原因とする自殺が、七千九百四十七人にのぼることにも示されています。

 自殺者が年間二万台から三万台にはね上がったのは一九九八年です。完全失業者は〇四年度三百八万人に達し、十年前より百十四万人も増えています。三百万人が仕事につけないのは深刻です。

 仕事につけても、多くは賃金の低いパート、派遣・請負など非正社員です。生活も雇用もきわめて不安定で、使い捨て同然です。

 空前の大もうけをあげる大企業の陰で、犠牲をしわ寄せされる下請け中小業者では、経営破たんや借金苦で命を絶つ悲劇が後を絶ちません。

 「勝ち組」「負け組」をつくりだす競争社会と効率優先の小泉「構造改革」のもとで、どれほど多くの人々がどん底に突き落とされたことでしょうか。こんな冷酷非情な政策は転換すべきです。

 働く人の自殺の一因に、うつ病など「心の病」の増加があります。「心の病」は社員三千人以上の大企業の七割で増加傾向にあります(〇四年産業人メンタルヘルス白書)。

 成果主義による競争と歯止めのない長時間労働が、社員のストレスと疲労を極度に高めています。社員の健康を確保するのは企業の責務です。その責任を果たすべきです。

 痛ましいのは、未来ある若者の自殺です。ネットでつながった人たちの集団自殺も増えています。

 二十、三十代の死因の第一位は自殺です。若者の自殺は「助けてほしい」という心の叫びといわれます。

 人間として生きる意欲と希望を持てない若者が増えている現状は、日本社会のゆがみを象徴しています。

 競争主義の教育のもとで、子どもたちは自己肯定感情を深く傷つけられ、「私は価値のある人間」と思える高校生は37・6%にすぎません。

 社会に出ても就職難で「自分は必要とされていない」と思わされる現実に直面させられます。働いていず教育も受けていない「ニート」が増え、八十五万人にのぼります。

 正社員で働く若者は、身も心もボロボロにされる過酷な働き方で苦しめられています。過労自殺を含め精神障害による労災認定は、二十、三十代の若い世代が六割を占めます。

 若者たちが人間として大切にされない社会の現状を打開することは、日本の将来にかかわる問題です。

自殺防止の総合対策を

 日本の人口十万人当たりの自殺者二十五・三人は、主要十八カ国と比べるとロシア、ハンガリーに続く高率です。日本を世界でも最悪水準の「自殺大国」にした社会的な原因を取り除くことは、政府の責任です。

 同時に、追い詰められた人たちの苦しみを受け止め、相談にのる自殺防止のセーフティーネット(安全網)の確立をはじめ、自殺を防ぐ総合的な対策が求められます。


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