2005年6月6日(月)「しんぶん赤旗」

主張

「平等神話」の崩壊

格差是正へ かじを切るとき


 最近、日本の不平等化の深刻さを示す報告が相次いでいます。

 内閣府の経済社会総合研究所は、日本の所得格差が一九九七年ごろから拡大し、とくにフリーターなど非正規雇用の増加によって、若い人たちの間で格差の拡大が急速に進んでいるとするリポートを発表しました(五月二十五日、「フリーターの増加と労働所得格差の拡大」)。

 リポートは、従来の実証研究から漏れていた非正規雇用や失業者を含むデータを使って所得格差を分析。その結果、不平等化がこれまでの研究よりもいっそう大きく、進み方も急であることが分かりました。

急速に進んだ不平等

 九〇年代後半、学者やジャーナリストらが、実態にもとづいて日本の不平等化に警鐘を鳴らしました。

 政府は所得格差の拡大を認めず、「平等神話」にしがみついて反論しました。その先頭に立ったのが当時の経済企画庁(現・内閣府)です。

 日本は平等な国だから、格差を広げる「市場重視型改革の余地がある」(九八年、「日本の所得格差」)―。「構造改革」を加速すべきだという立場からの反論です。

 経企庁の反論の要点は、統計に見られる所得格差の拡大は、単に高齢化にともなう見かけ上の拡大にすぎず、同一世代内での所得格差は拡大していないというものでした。

 これに対し、今回の内閣府のリポートは、すでに九七年ごろから、高齢者だけでなく若者の中で所得格差が広がっていたことを明らかにしました。しかもそのテンポは、サッチャー政権が「構造改革」を強力に進めた八〇年代イギリスの格差拡大のスピードと、「大きな差はない」ほど急激だと指摘しています。

 九〇年代後半、不平等化が急速に進んでいた日本では、さらに雇用とくらしを痛めつける政治を強行してはならなかったということです。

 総務省の調査によると、ことし一―三月の、労働者に占める非正規雇用の割合は32・3%と過去最高、二十四歳以下では48・2%に達しています。ますます所得格差が広がっていることは間違いありません。

 小泉内閣をはじめ政府・与党が不平等を拡大する「構造改革」を推進してきたのは、くらしと雇用の実態を無視した失政です。いま必要なのは、格差を広げる「構造改革」路線を転換して、不平等化に歯止めをかけ、是正する方向に大きくかじを切ることです。

 ところが、政府・与党は一段と雇用・労働条件を不安定にする規制緩和を進め、社会保障では給付減・負担増を押し付け、庶民からいかに税金を吸い上げるかに夢中です。

無謀な大増税はやめよ

 税制による所得格差の是正効果は八七年の4・2%から二〇〇二年の0・8%へと、五分の一以下に急降下しています。所得税の最高税率は八七年の70%から37%へと半分近くに引き下げられ、所得再分配の機能を大幅に低下させました。

 所得課税の抜本見直しを議論している政府税制調査会の石弘光会長は最高税率の引き上げを否定し、「所得控除をいかに見直すかに尽きる」と記者会見でのべています。大企業とともに、高所得層の減税は「聖域」扱いです。所得控除を縮小・廃止すれば課税最低限が下がり、より低所得層に厳しい税制になります。

 加えて政府・与党は、中低所得層を直撃する定率減税の全廃と消費税増税を計画しています。

 不平等がいよいよ深刻となっている日本で税制の所得再分配の機能を破壊するのはあまりにも無謀です。


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