2005年6月3日(金)「しんぶん赤旗」

主張

訪問リフォーム

悪質な商法による被害を防げ


 認知症の老姉妹が、訪問リフォーム十九社による不要な工事で約五千万円の被害を受け、自宅を競売にかけられそうになった事件は、悪質商法の広がりを示す氷山の一角です。

 リフォーム工事をめぐるトラブルは増え、中でも訪問販売による苦情が多発しています。昨年度、全国で八千四百八十一件の相談が国民生活センターなどに寄せられています。

被害の多くは高齢者

 訪問リフォームの手口は巧妙です。「耐震診断を行う」「外壁が傷んでいる」「床下がしけており換気扇が必要」「屋根瓦がずれている」など住宅点検を装い、うそや誇張した説明で不安にさせたり、執拗(しつよう)な勧誘で契約させています。

 市価の数倍もの高額な契約や繰り返し契約させる手口で被害を拡大しています。被害の平均契約額は百六十三万円、被害者の八割は六十歳以上の高齢者です。月十三万円の年金生活者に、十万円以上のクレジット支払い契約をさせた例もあります。工事の多くは不必要でずさんです。

 悪質な訪問販売は、特定商取引法などの法令と地方自治体の条例に抵触します。点検を装い販売目的を隠した勧誘や虚偽の説明、故意に重要事項を説明しない、心理的に不安にさせる行為などは許されません。

 不適正な取引業者と知りながら、連携してクレジット契約をする信販会社も、その責任が問われます。

 法違反の訪問販売には、改善の指示や営業停止など行政処分ができますが、苦情の増加に比べて処分例はわずかです。経済産業省によるリフォーム業者の行政処分は、この三年間ありません。東京、埼玉、千葉、神奈川の四都県は悪質事業者対策会議を設置していますが、昨年度の訪問リフォーム業者の行政処分は一件、指導は一件にとどまっています。

 悪質な商法を見逃さないように、系統的な監視と苦情が多い悪質な業者名の公表、迅速な行政処分など、厳しく取り締まるべきです。

 悪質な商法がはびこる背景に、訪問リフォーム業は、だれでも簡単にできることがあります。リフォームなど五百万円未満の軽微な工事は、建設業法上の許可はいりません。国民生活センターが、リフォーム業者の登録制度や施工資格を検討するように求めているのはこのためです。

 タレントを使ってテレビやチラシで宣伝する大きな会社でも、トラブルが続発しています。悪徳商法に甘い対応があってはなりません。

 被害にあわないため、消費者自身が十分注意することが必要です。同時に、行政が被害防止のため情報の提供と注意喚起を徹底し、とくに高齢者を守る地域からの取り組みを支援することも大切です。

 いま、安心して住み続けられる住宅を求め、リフォームの需要は増大しています。長期の不況にあえぐ小規模の建設業者にとっては、重要な仕事確保の場ともなっています。

 住民がリフォーム工事を地元業者に発注すると、改修費用の5―10%を地方自治体が助成する制度も広がっています。わずかな予算で地域経済の活性化に役立ち、住民からも「助かります」と喜ばれています。

消費者行政の充実を

 それだけに、住民の願いを逆手に取った悪質な訪問販売業者の横行を許さず、被害を防ぐことです。

 悪質な商法が増えているのに、消費者の相談窓口である国民生活センターや消費生活センターが縮小方向にあることは見過ごせません。消費者を守る行政と相談体制を充実させることこそ国民の願いです。


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