2005年5月30日(月)「しんぶん赤旗」

主張

共通歴史教材

交流し、理解し未来をひらく


 国を超えて歴史認識を共有することはできるのでしょうか?

 この疑問への、一つの実践的な答えが出されました。日本、中国、韓国の研究者・教師らが共同して、共通歴史教材『未来をひらく歴史』を作成、刊行しました。韓国ではすでに発売。日本でも間もなく店頭に並び、中国でも来月に発売されます。

 一国の枠に閉じこもるのではなく、「開かれた歴史認識」の共有をめざす『未来をひらく歴史』が、国境を超えて多くの人々に読まれ、交流と理解が深まるなら、友好と平和に大きく寄与するでしょう。

平和への熱い思いで

 日本、中国、韓国の研究者の間では、前提となる知識の差、事実関係のとらえ方など、歴史認識でさまざまな違いがあったとのことです。

 例えば、『未来をひらく歴史』の中で紹介されていますが、日本でいう「韓国併合」を、韓国は、そもそも当時の条約は無効だとする立場から「韓国強占」(強制的な占領)と表現しています。このように、一致しない点や研究を深めなければならない点もありますが、平和への熱い思いで一致し、歴史認識の違いを乗り越えるための努力、議論が熱心に積み重ねられ、一つの本として結実したことは貴重です。

 日中韓の共通歴史教材づくりを始めるきっかけになったのは、四年前に侵略戦争美化の『新しい歴史教科書』(扶桑社)が検定合格になったことでした。その危険な内容を批判するにとどまらず、「実際にどのような歴史を伝えていったらよいのか」という問題意識から「日中韓3国共通歴史教材委員会」が組織され、共通歴史教材づくりとなりました。

 同委員会は、『未来をひらく歴史』の「あとがき」で、「対話と討論、そして、未来へ向けての連帯こそが、自らを豊かにし、新しい歴史の可能性を開いてくれる。それは、この歴史教材作りを通じて得た私たちの確信です」とのべています。

 「未来へ向けての連帯」とは正反対なのが『新しい歴史教科書』です。歴史認識の共有を頭から否定する立場から、「歴史は民族によって、それぞれ異なって当然」とし、「歴史に善悪を当てはめ、現在の道徳で裁く裁判の場にすることもやめよう」と主張しています。

 これは、国際的にまったく通用しない議論を展開するためです。例えば、『新しい歴史教科書』には、次のような記述があります。

 「日本政府は、韓国の併合が、日本の安全と満州の権益を防衛するために必要であると考えた」

 「日本政府はこの戦争を大東亜戦争と命名した。日本の戦争目的は、自存自衛とアジアを欧米の支配から解放し、そして『大東亜共栄圏』を建設することであると宣言した」

 「事実」を書いているようですが、違います。これが日本の考えであり外国と違って当然だ、あれこれ「善悪」を言うなという立場からの記述です。戦前の天皇制政府と同じ立場にたって、侵略戦争を美化し、植民地支配を正当化するものです。

 文科省が、今年の教科書検定で合格させた『新しい歴史教科書』も、以前同様、植民地支配と侵略戦争を美化・正当化しています。「合格」とするのは根本的誤りです。

侵略美化教科書を拒否

 侵略美化教科書を教育の場に持ち込むことは、日本とアジア、世界の人々との友好を壊し、子どもたちの未来と日本の生きる道を奪うことにつながります。地域から反対の声をあげ、きっぱりと拒否しましょう。


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