2005年5月16日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

農林業で地域が元気


 農業や林業を町おこし、村おこしの柱に据えた取り組みが広がっています。農林産物の輸入推進と大規模化優先政治による、きびしい農林業経営情勢のなか、地域の特性と個性を生かし、知恵と底力を発揮して地域を元気にしています。そのなかから、群馬県富岡市(とみおかし)の「富岡楽しい農業研究会」の取り組みと、高知県馬路村(うまじむら)の上治堂司村長の手記を紹介します。

収入も意欲もアップ 研究会作り新規作物に挑戦 群馬・富岡

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 市の農林課長が「こんなに元気な会はない」と太鼓判を押す農業生産者集団が群馬県富岡市にあります。「富岡楽しい農業研究会」です。「品種に勝る技術なし」と、新規作物の栽培にチャレンジ、出荷量を年々増やし、JA(農協)甘楽(かんら)富岡からも頼りにされる存在です。

 研究会が発足したのは二〇〇二年。当初、四十三軒でスタートし、六十五軒に広がっています。

 研究会が提案して栽培している作物は五種類。中でも「サラダゴーヤ」は全国で出荷用に栽培しているのは富岡市だけといいます。東南アジア原産で表皮が白く苦みがうすいのが特徴。わさびしょうゆで食べたり、サラダにしたりします。「関東では、普通のゴーヤの苦みが強すぎて食べられないという人もいる」と、消費者の嗜好(しこう)を調査・研究し、商品化に踏み切りました。

ブランドネギ

 出荷を始めて十一年目になる「やわらかねぎ」は研究会メンバーのほとんどが作っています。甘みが強く葉の部分までやわらかい品種。市場でも評価され、県のミニブランド指定も受けています。販売店と農協、生産者が相談し事前に価格を決めておく相対価格で出荷し、JA甘楽富岡として昨年度八千万円の売り上げとなり、一億円をめざしています。

 ほかに「赤ねぎ」「殿様いんげん」、完全甘柿の「早秋」「太秋」を栽培。現在、研究会のそれぞれの作物の班長がJAの出荷責任者をまかされています。

 日本共産党の農業委員を九期二十七年と市議一期を務めた同会の吉田耕作会長(73)は「日本の農業にとって暗いニュースが多いなか、生産者同士が知恵と力を出し合って豊かになっていこうというのが目的です。生産者が楽しいと感じるには経済的な要素が大切なんです」と話します。

 会提案の作物の栽培だけで、多い人で五百万円の収入になり、収入アップが元気の源になっています。みんなで栽培して、地域の特産品として認められるようになりました。

養蚕から転作

 発足時から会に参加している神宮利夫さん(69)は「研究会に助けてもらったんさ」と笑います。九年前まで養蚕をしていましたが、設備費などを差し引くと手元にいくらも残りませんでした。研究会の提案した作物づくりを始めて、現金収入も増え、夫婦で旅行する機会も多くなりました。

 神宮さんは「やわらかねぎは一本の苗から数十本に増えるから、体力的にも栽培しやすいし、赤ねぎは農閑期に収穫できて収入になる。おかげで心に余裕ができたね」と語ります。

 会員の井上邦男さん(73)は「やわらかねぎの(生産者)価格が決まっているから暴落を心配せずに、いいものをつくるために専念できる。みんなでやっているから続けようと思える」と話します。

 吉田会長はいいます。「農家が経済的に豊かになり生産意欲を高めることが農業を守り、安心で安全な食べ物を供給することにつながります」(浜島のぞみ)


ユズ直販、全国に顧客 間伐材でカバンや座布団 高知・馬路村

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 高知県の東部にある馬路村は、徳島県境に接し、周囲を標高千メートル級の山々に隔てられ、村面積の96%を森林が占めています。国道、鉄道、信号機、コンビニもない人口千二百人ほどの小さな山村です。

 こんな小さな村ですが、先人が守り育ててきた自然、森林、柚子(ユズ)、温泉、国重要文化財の金林寺(こんりんじ)薬師堂など地域の資源があります。これを武器に、農業、林業、観光を産業の中心として雇用の場をつくり、定住・交流人口の拡大に向けて取り組んでいます。

村売り出す戦略

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間伐材を利用したカバンと座布団

 これまで村では、農協、森林組合、(株)エコアス馬路村などの団体・会社と行政が力を合わせ、「村」の名前を売るブランド化に取り組んできました。平成十三年(二〇〇一年)には高知報道機関十二社会の選考による「龍馬賞」、平成十五年(〇三年)にはサントリー地域文化賞を受賞し、全国に馬路村の名前が知られるようになってきました。

 農業では、農協と生産者が力を合わせ、柚子ドリンク「ごっくん馬路村」に代表されるような、柚子の生産から加工・販売までを一体的に取り組み、直販方式を中心に加工品のみならず村をまるごと売り出す斬新な戦略で、全国に約四十七万件の顧客を持つ村内最大の産業になっています。

独自に商品開発

 魚梁瀬(やなせ)杉で有名な林業を見ると、村面積の96%を占める森林は、村内最大の資源であるものの、木材価格の低迷等により、光が見えない厳しい状況が続いています。

 しかし、森林に関する産業に多くの村民が携わっているという現状と、豊富な森林資源を考えると、森林関連産業の発展なくして村の将来は見えてこないというのが現状です。このため、森から生まれた産品の販売を目指す「森の仕事まるごと販売計画」を立ち上げ、間伐材でできた木のお皿、カバン、座布団など、他にはない商品の開発と販売に取り組んでいます。

 こうした取り組みが全国に知られるようになり、年間三百ほどの視察団体が訪れるなど、多くの村民の励みになっています。

 今後も、地域の資源を力に、お客様に愛される商品づくりと「馬路村」のブランド化を目指して取り組んでいきたいと思っております。(馬路村長 上治堂司=かみじ・たかし)


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