2005年5月6日(金)「しんぶん赤旗」
主張
こどもの日
言葉にならない声も受けとめ
こどもの日は、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかる」ために一九四八年に制定されました。憲法と教育基本法が施行された翌年のことです。
子どもの最善の利益
五一年のこどもの日には、憲法にしたがい、子どもの基本的人権の尊重をうたった児童憲章が制定されています。「児童は、人として尊ばれる。児童は、社会の一員として重んぜられる。児童は、よい環境のなかで育てられる」。これらの宣言は、学校の教室にもかかげられ、子どもの心をとらえ、影響を与えました。
半世紀がたち、憲法にもとづく子どもの人権尊重の内容は、いっそう豊かになっています。十一年前のこどもの日を前に、日本が批准した「子どもの権利条約」もその大事な柱です。
条約は、「子どもの最善の利益」をうたっています。子どもにかかわるすべてのことは、子どもにとって何が最善かを考えて決めなくてはならず、国や社会は、それを守らなくてはなりません。
また、「意見表明権」が初めて規定されました。自分にかかわることについて、自分の思ったことや考えたことをどんな形でも、表明でき、その意見を尊重される権利です。
「子どもの最善の利益」も、「意見表明権」も、大切なのは子どもの声を受けとめ、尊重するおとなの役割です。
幼い子どもの場合、泣いたり、かんしゃくを起こしたり、ときにはお母さんの胸をトントンたたいたり。つい「やめなさい」といってしまいそうですが、背後に隠された子どもの声に耳を傾けてみませんか。それを親が受けとめるためには、親自身が、自分を大切な存在だと思える肯定感情が必要だ、との指摘があります。親同士が安心して悩みを出し合い、つらいときにはがまんせず助けを求めることができる、そんな場を、もっとつくっていきましょう。
大きくなっても、自分の気持ちを言葉であらわすとは限りません。一緒に問題を考えてくれるおとなの存在が大切です。元プロボクサーで俳優の赤井英和さんは、映画「時代(とき)を撃て・多喜二」の中で、高校時代に停学になったとき、先生に小林多喜二の『蟹工船』をすすめられて読んだときのことを語っています。
「先生はいつも口癖みたいなことで、『ひとりはみんなのために。みんなはひとりのために』ということをよくおっしゃっていましたけれども。なんかそんなことがわかったような気がした記憶があります」(映画「時代を撃て・多喜二」から)。
子どもたちの生活は変化していますが、人権を尊重して子ども自身の力を引き出すおとなの存在があれば、困難ものりこえることができます。
憲法の精神を生かして
憲法や教育基本法が少年犯罪の原因であるかのようにいう人たちは、個人の尊厳の尊重を利己主義と同一視して、人権を制限しようとねらっています。しかし、少年事件の背景の一つに、子どもの自尊心を深く傷つける権利侵害があることは、関係者や専門家が共通して指摘していることです。
子どもの権利を保障する流れは世界に共通するものです。政府も条約の内容は「世界のすべての国に受け入れられる普遍性を有する」(外務省ホームページ)といっています。
憲法の精神を生かし、子どもの声が尊重され、社会参加する権利を保障してこそ、子どもをめぐる危機も打開する道が開けます。