2005年5月5日(木)「しんぶん赤旗」
球場のサラ金広告 減少
本紙調査で判明
「問題多い」と
プロ野球十二球団の本拠地で、サラリーマン金融(サラ金=消費者金融)の広告・看板が、減少していることが、本紙調査で明らかになりました。三年前、本拠地の十一球場中八球場にあった広告が、今季は十三球場中六球場にとどまっています。顕著なのは、その掲示数で、のべ二十一社から九社へと半減しています。
この三年間で、サラ金広告の契約をすべて打ち切ったのは三球場。二年前、四社あった広告を全廃した東京ドームをはじめ、昨年の横浜スタジアム、ことし四月には千葉マリンスタジアムが加わりました。
このうち東京ドーム、千葉マリンは、サラ金業自体が社会的に問題があるなどの理由から、「今後、いっさい掲載しない」としており、以前から同様の姿勢の三球場(神宮、甲子園、広島)と合わせて、“サラ金広告拒否球場”は五つに増えました。
注目されるのは、掲示している球場すべてで、数が減っていること。福岡ヤフージャパンドームは五社から三社へ、ナゴヤドームも三社から一社、大阪ドームも三社から二社となっています。
ファンの声が動かす
重い公共的役割と責任
この間、サラ金広告が減少したのは、いくつか理由があります。
一つは、サラ金業界がここ数年、業績を落としていること。宣伝費も「五、六年前の半分ほど」(プロミス)と答えるところもあり、球場広告から撤退したケースも、二、三例ありました。
しかし、それ以上に大きいのは、東京ドームが全廃した影響です。
「東京ドームさんがなくしてから、すすんで(サラ金)広告を取らないことにしました」(福岡)、「全廃は強烈なインパクトがありました」(ある在阪球場)と、これを機に各球場がサラ金への認識を変えつつあることをうかがわせます。
球場が世論を気にしていることも以前にはない特徴です。「他の球場さんはどうなってますか」とさかんに記者に逆取材してきたり、「(サラ金の広告掲示は)世間のイメージを見ながらやっています」と率直に語るところもありました。
四月、サラ金広告がなくなった千葉マリンのように、地元の働きかけが「撤去」に実ったことも見逃せません。二〇〇二年に地域の日本共産党議員が申し入れし、昨秋には「第二十四回 全国クレ・サラ・商工ローン・ヤミ金被害者交流集会in千葉」実行委員会が、撤去を訴えたことが、球場を動かした形です。働きかけによって他球場でも変化は十分可能です。
しかし、球場広告は、サラ金業界に、特別の“うまみ”があります。
サラ金各社は〇三年十月以降、午後五時から九時まで、テレビコマーシャル(CM)が放映できなくなっています。日本民間放送連盟が、「子どもや若者の金銭感覚をゆがめる」などとして、この時間帯の自粛を続けているためです。
しかし、球場広告は、この抜け穴となっているのです。
とくに“一等地”といわれる球場のバックネット下の広告は、投球のたびにテレビに大きく映し出され、ゴールデンタイムにサラ金CMを流し続けているのに等しい絶大な効果があります。
あるサラ金会社の広報担当者は、球場広告などについて、「(テレビの)キー局でCMが(深夜枠しか)できなかったとき、われわれの業界が工夫し、あみだしたやり方」と、その意図を語っています。
一方、在京球団の関係者は「消費者金融は他の業界より、かなりいい条件を提示してくれる」と語るなど、球場広告がこの業界にとって、いかに利用価値が大きいかを物語っています。
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現在、球場広告で最も多いのは「武富士」。六球場中五つにあり、うちバックネット下も一球場あります。「武富士」は一昨年、会長の盗聴事件などが発覚し、テレビCMすらできない状態が続いています。
こうした広告を出し続ける球場側の社会的な責任も問われています。
(和泉民郎)
サラ金問題に取り組む宇都宮健児弁護士の話 サラ金が、野球場に広告を出すのは、自分たちのダーティーさ(汚さ)をスポーツのクリーンなイメージで打ち消す狙いがあります。とくに、企業のトップが有罪判決を受けた武富士がこれだけあるのは問題です。球場やテレビでは、多くの青少年が目にします。球場はその公共的な役割、責任を考えてほしい。
プロ野球本拠地球場のサラ金広告数比較
札幌(日本ハム) | ― | 1社 |
フルキ(楽天) | ― | 0社 |
東京(巨人) | 4社 | 0社 |
インボ(西武) | 1社 | 1社 |
神宮(ヤクルト) | 0社 | 0社 |
横浜(横浜) | 1社 | 0社 |
千葉(ロッテ) | 2社 | 0社 |
ナゴヤ(中日) | 3社 | 1社 |
甲子園(阪神) | 0社 | 0社 |
大阪(オリックス) | 3社 | 2社 |
スカイ(オリックス) | 2社 | 1社 |
広島(広島) | 0社 | 0社 |
福岡(ソフトバンク) | 5社 | 3社 |
合計(のべ) | 21社 | 9社 |