2005年5月4日(水)「しんぶん赤旗」

脱線現場のマンション住民

もう、住めない

戒めの場所に JRは買い取って


 JR福知山線脱線事故で、先頭の車両が突っ込んだ兵庫県尼崎市のマンション(鉄筋九階建て)の全四十七世帯は、いまホテルや親せき宅などで避難生活を余儀なくされています。不安で体調を崩す人も出るなか、住民の思いは…。

 休日の三日、マンションには引っ越し作業などに追われる住民がいました。

 荷物をとりにきた会社員の男性(36)は、「JRに兵庫県内のホテルを用意してもらったが、嫁さんの職場がここから十五分のところ。仮住まいならこの近くにしたい」といいます。そして「ホテル住まいじゃ息苦しくって安らぐこともできない。JRは早く対応してほしい。いまだに謝罪がない」と話します。

移転を提案

 JR西日本は、引っ越し費用や月十五万円程度の家賃を負担するなどの条件で、ホテルから尼崎駅周辺の賃貸マンションへの移転を住民側に提案しています。マンションに倒壊の恐れはないというものの、住民側は「もう住めない」という思いです。

 会社員の田代和也さん(31)の妻・恵美さん(30)は娘の彩季(さき)ちゃん(3っ)と三階自宅にいたとき、先頭車両がマンション一階の駐車場に突っ込んできました。

 ドーンという音と横揺れ。「最初は地震かなと思った」と恵美さん。ベランダに出るともうもうと白煙が立ち込めました。「助けて」という悲鳴が周囲から聞こえました。いまホテル住まいの恵美さんは食欲もなく気分も優れません。彩季ちゃんからは「まだいっぱい血があるの」と聞かれます。

 妻と子ども二人と住む二十七歳の男性は「火災が起きなかったのは奇跡的。住民が死んでもおかしくない状況だった」と。三階に住む会社員の新居豊博さん(45)は事故直後、駐車場を見に行きました。大破した車両、押しつぶされた車。ガソリン臭が周囲に充満していました。「事故後はよく眠れない。一時間ごとに起きてしまう」

補償協議へ

 四月二十八日、事故後初めて開かれたマンション管理組合の集会に参加した住民からは「多くの人が亡くなった場所に住むことはできない」という意見が相次ぎました。「マンションをJR西日本に買い取ってほしい」「慰霊碑を立て戒めの場所にして」などという声も。

 住民側は今後、同社と補償問題を協議していきます。

防御壁要求

 現場とマンションを調査してきた日本共産党兵庫8区国政対策責任者の庄本悦子さんは、「調査で二つのことがわかった」といいます。

 「ひとつは、国土交通省は事故現場に防御壁を作るようにJRを指導してきたが防御壁がないまま放置してきた。もうひとつは、JRも『設置義務はない』として国の指導に従わずにきた。もし防御壁があったのならばマンションの被害は免れたし、救出に何日もかかる事態はなかったのに…」

 庄本さんは、運転再開までに防御壁を作り安心と安全な住環境にするよう要求。党尼崎市議団が市長に申し入れた「心のケア」について、マンションに住む子どもたちへ配慮を再度、市長に申し入れました。


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