2005年5月3日(火)「しんぶん赤旗」

主張

憲法施行58周年

国民のための憲法生かすとき


 日本国憲法が一九四七年五月三日に施行されてから五十八周年になりました。間もなく「還暦」です。日本を平和で民主的な国にするために、大きな役割を果たしてきた憲法です。国民こぞって祝い、さらなる「長寿」をめざしましょう。

 一方で、日本国憲法を変えようという議論と動きが、かつてなく強まっているのも、今年の特徴です。これは、けっして国民の要求から出ているものではありません。何のための改憲論なのかを、見極める必要があります。

「血税」復活の危険

 日本国憲法の施行から五十八年さかのぼると一八八九(明治二十二)年。大日本帝国憲法(明治憲法)が発布された年になります。

 明治憲法発布後五十八年の大きな特徴は、対外侵略戦争を繰り返したことです。日清戦争(一八九四―九五年)、日露戦争(一九〇四―〇五年)、第一次世界大戦(一九一四―一八年)、中国侵略から第二次世界大戦・太平洋戦争につながる十五年戦争(一九三一―四五年)。主な戦争だけでも、これだけあります。

 日本国憲法施行後の五十八年間、日本は、海外で直接に武力行使する戦争を行ってはいません。憲法で、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすること」(前文)を明確にし、戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認(第九条)を定めたことが、歯止めとなってきたからです。明治憲法には、「臣民」の「兵役の義務」がありましたが、日本国憲法にはなく、戦死者を出していません。

 明治政府は、徴兵制を導入する際の告諭(一八七二年)で、人間たるもの全力で国に報いなければならず、西洋人はそれを「血税」と言う―「生血を以(もっ)て国に報ずる」意味だと説明していました。「生き血をとられる」と思った人々が「血税一揆」を起こしましたが、その後の歴史を見れば、誤解だとはいえません。

 自民党の改憲「要綱」は、憲法第九条を根本的に改変して「自衛軍」を保持すること、国民に「国防の責務」を課すことを主張しています。個人の権利を調整する「公共の福祉」という現憲法の概念はあいまいだから、「国家の安全と社会秩序を維持する概念」として明確にしなければならないとも言っています。「国家の安全」に奉仕するために「国防の責務」を果たせと、国家が国民にたいして命令する憲法へと、根本的に作りかえようとしているのです。文字通りの「血税」を復活させようとするたくらみです。

 もちろん、自民党などの改憲策動は、たんなる復古主義ではありません。アメリカとの軍事同盟を絶対化して、アメリカが海外で先制攻撃の戦争をした場合に参戦することを狙ったものです。

世界平和への真の貢献

 小泉自公政権は、戦争状態のイラクにまで自衛隊を派兵しましたが、直接の武力行使まではできません。それを「制約」とみなし、取り払うことを狙っているのが九条改憲です。「自衛軍」を明記するなどして、九条二項を廃棄することは、戦争放棄を規定した一項をふくめた九条全体を廃棄することになります。

 イラクで自衛隊が米軍とともに武力行使するような道に踏み出したらどうなるでしょう。それ自体が世界の平和をこわします。そして、平和憲法があるが故の信頼を失います。

 日本国憲法は、国民のためのものです。それを生かしてこそ、世界の平和への真の貢献ができます。


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