2005年4月28日(木)「しんぶん赤旗」

多くの未来 返して

JR脱線

高3・大1 通夜しめやかに


 「明るく思いやりのあった子でした」。兵庫県尼崎市のJR福知山線塚口―尼崎間で快速電車が脱線した事故で二人の生徒が死亡し、十四人の生徒が重軽傷を負った川西北陵高校。同校三年生の尾形優さん(17)の通夜が二十七日夜、兵庫県猪名川町でしめやかに行われ、同級生らが参列しました。

 「たくさんの夢があったのに残念だったろうに」というのは、優さんと小学校のころからの同級生・南野有紀さん(17)。小学校の自然学級のとき同じ部屋で楽しく過ごしたことが思い出となりました。「同窓会で会おうといっていたのにこんな形で会わなければならないなんて悔しい」と涙をぬぐいます。

 「私の娘も骨折して入院しています。優さんと娘は高校の同級生です」という男性(45)は、「楽しい春が悲劇の春になってしまった」と怒ります。

 この男性は「民営化によって効率と利益を優先させた結果が招いたものだ」とJR西日本を批判します。「絶対に二度と起こさないでほしい。私の娘も高校三年生で一番大事な時期。骨折を治すことと心のケアもしないとショックが大きい」といいます。

 川西北陵高校では現在六人の生徒が入院。昨日全校集会を開き黙とうしました。同校の教頭は「生徒たちの心のケアが必要です」と衝撃の大きさを語ります。

 事故当日は高校三年生の遠足の日で、大阪のテーマパークで楽しむ予定になっていました。

 午前十時に現地集合。三年生二百七十七人が参加予定が、予定時間を過ぎても十六人が到着しませんでした。十時半を過ぎて、事故に巻き込まれケガをした生徒から連絡が入り学校は騒然となりました。

 「たくさんの幸せと未来をかえして」。参列した同級生の共通の思いがあふれた通夜となりました。

「もう会えない…」友人号泣

 JR福知山線の事故で亡くなった大学一年生=の片瀬朗さん(19)=川西市=の通夜が二十七日、同市内でしめやかに行われました。高校や中学の同窓生ら約五百人が参列。友人の突然の死に、式場のあちこちでおえつがもれ、抱き合って涙に暮れる青年も。「JRは一体何してんねん」と怒りをぶつける男子学生もいました。

 片瀬さんは今年三月、市内の県立川西明峰高校を卒業、大学に進学したばかりでした。片瀬さんと高校三年のとき同じクラスで、「一週間前に友人六人で焼肉を食べたばかり」という男子学生(18)は、焼香したあと声をあげて泣き崩れました。

 「あいつはお人よしで本当にいいヤツ。年をとってもずっと友だちでいようと思っていたのに。もう会えないなんて信じられない。何でこんなことになるんや」と、泣きはらした顔で語っていました。

安否わからずに何十時間も待ち

 小寺一矢さん(63)=京都府長岡京市=は、二十七日午前四時半ごろ尼崎市記念公園総合体育館に遺体となって運ばれた妹の有田直子さん(56)と対面しました。琴の師匠であり、七月にひかえた長女の結婚式を心待ちにしていたという直子さん。いつもは乗らないJR福知山線の二両目にたまたま乗り合わせたところ、事故に巻き込まれました。午前八時ごろ、夫と兄、娘と息子が直子さんであることを確認しました。

 「何十時間もずっと分からずに待ちつづけました。中にいる方々は、本当によく耐えておられる」と涙で声をつまらせながら語りました。

 二十二歳のおいを亡くした男性(50)は「大学生で就職活動中でした。スポーツ好きで、まじめな子だったのに」と話し、中学時代の友人の安否を確かめにきた男性(24)は「うそばかり説明するJRは信用できない」と語りました。

 赤く目をはらし無言でたち去る人や、「まだ何も分からない」と足早に体育館を後にする人たちの姿が見られました。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp