2005年4月23日(土)「しんぶん赤旗」

主張

港湾空港の米軍使用

平和も自治もこわす事前指定


 日米両政府は、「周辺事態」の際に米軍が優先使用する民間港湾・空港の事前指定について検討をしています。大野防衛庁長官は、具体的な話をする段階ではないとしながらも、「話は進んでおります」とのべました(十二日)。

 「周辺事態」とは、日本が攻撃されていないのに、放置すれば影響がおよぶとして、アメリカの戦争に協力する状態―要するに、「日本防衛」と無縁な米軍の戦争です。米軍が海外で行う戦争のために民間港湾・空港を強権的に使用できるようにするなど許されないことです。

周辺事態法の制約

 日米共同の戦争態勢づくりは、「周辺事態」と「日本有事」の一連の戦争のための共同戦争計画を策定し、必要に応じて更新するというかつてない段階に入っています。国民の戦争動員の態勢づくりもつよめられています。

 しかし、「周辺事態」は「日本防衛」と無縁であるため、米軍支援といっても、米軍との完全な一体化はできません。日本が、海外でアメリカと一緒に戦争することになるからです。これは、憲法で禁じられていることであり、政府の見解によっても許されないことです。

 そこで、周辺事態法でも、港湾・空港の使用について、「地方公共団体の長に対し、…必要な協力を求めることができる」としか定めることはできませんでした。地方自治体から管理権を剥奪(はくだつ)して強権的に戦争協力させることはできません。

 地方自治体の長が管理者となっている民間港湾や空港は、当該首長の許可がなければ使用できません。「周辺事態法」は、戦争協力の仕組みとして不当なものですが、戦争放棄、交戦権否認などの平和原則や地方自治の原則にもとづく制約を無視することはできないのです。

 米軍が、優先使用の確約がなければ戦争計画は立てられないといって事前指定をせまるのは、周辺事態法の制約をとりはらって米軍の優先使用を認めさせるためです。米軍は、一九九三年から九四年にかけて、北朝鮮の核開発疑惑を理由に「軍事制裁」の動きをつよめた際も、港湾・空港名をあげた千五十九項目もの対日支援要求をおこないました。

 民間港湾は、神戸、松山、水島、福岡、大阪、名古屋の六港湾。空港は、成田、関西、福岡、長崎、那覇など十空港です。港湾のうち、神戸は神戸市、福岡は福岡市、松山は愛媛県、水島は岡山県が管理者です。空港はすべて国などの管理空港ですが、成田空港のように、運輸相、空港公団総裁、千葉県知事、平和搭奉賛会の「軍事的利用は認めない」という四者合意をかわした空港もふくんでいます。沖縄の下地島のように地方自治体が管理する第三種空港も対象にされる可能性もあります。

 「周辺事態」を口実に、管理者である地方自治体を無視して、事前指定による優先使用を押しつけるのは地方自治の原則に反します。軍事使用はしないという地元とのとりきめを反故(ほご)にしてはなりません。

軍事目標になる危険

 「周辺事態」で、米軍の民間港湾・空港優先使用を認めることは文字通り、日本列島を米軍の“不沈空母”にすることです。軍事作戦に貢献する民間施設は軍事目標にされる危険が大きくなります。自治体の権限を侵され、住民の安全が奪われる重大な問題です。

 日本をアメリカの戦争にひきこむ危険な日米安保条約と戦争態勢づくりの強化に反対していきましょう。


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