2005年4月11日(月)「しんぶん赤旗」

主張

温暖化防止計画

産業部門の排出減に実効性を


 政府の地球温暖化対策推進本部が、京都議定書目標達成計画(案)をまとめ、国民からの意見を募集しています(十三日まで)。

 京都議定書は、地球温暖化防止のために、日本にたいし、二〇〇八―二〇一二年までに基準年(一九九〇年)に比べ温暖化ガスを6%削減することを義務付けています。

家庭の対策も大切だが

 現状は、基準年比で逆に7・6%(二〇〇二年)増えており、削減約束との差は13・6%に広がっています。温暖化ガスのうち、九割を占める二酸化炭素の排出量が大幅に増えているからです。

 産業部門や貨物・公共の運輸部門の排出量が横ばいで推移しているのに、業務部門や家庭部門(自家用車を含む)で大幅に増えているため、と「計画」案は分析しています。

 増加している部門で削減していくことは必要です。家庭の努力は大切です。同時に、二酸化炭素排出量の八割は、産業・運輸(自家用車を除く)・業務部門が占めています。これらの主体は産業界・経済界であり、その責任は重いものがあります。

 「計画」案は、産業・経済界のとりくみを、日本経団連の「自主行動計画の着実な実施」に求め、それが「対策の中心的役割を果たす」と位置付けています。しかし、自主性に依存した従来のやり方のままで、京都議定書の削減目標が達成できるのか、問われています。

 ドイツでも、十年前には、産業界の自主性に頼り、温暖化ガスの削減がなかなか進まないという体験をしています。しかし、二〇〇〇年十一月に政府と産業界の間で協定を結びました。温暖化ガスを35%削減するという全体目標をかかげると同時に各業界団体も目標を決めました。また、透明性確保のために、第三者機関が監視・測定することも協定に盛り込んでいます。

 ドイツが、21%の削減目標にたいし、19%削減(二〇〇二年)しているのは、こうした協定があったからです。同様に政府と産業界が協定を締結しているイギリスでも、12・5%の削減目標にたいし、15%削減し、目標を2・5%上回っています。

 日本共産党の市田忠義書記局長が、参院環境委員会(三月十五日)で、「産業界と協定を結んで目標達成を促すやり方を日本でも参考にすべきだ」と質問したのにたいし、小池百合子環境相は「参考にしていきたい」と答えています。

 「計画」案は、「我が国は、他国のモデルとなる世界に冠たる環境先進国家として、地球温暖化問題において世界をリードする役割を果たしていく」とのべています。

 京都議定書を採択した「気候変動枠組み条約第三回締約国会議」の議長国としての責任を果たすための当然の決意です。産業界との協定化など実効ある措置に踏み出すことは、“世界をリード”するうえで欠かせません。「計画」案に盛り込むべきです。

足元からの対策を

 「計画」案は、6%の削減目標にたいし、エネルギー使用による二酸化炭素は、削減どころか0・6%の排出増を容認しています。森林吸収対策や京都メカニズム(海外から温暖化ガスの排出枠をえて、自国の目標達成に使える仕組み)に、削減目標のほとんどを頼っています。京都メカニズムは、京都議定書でも「補完的」と位置付けられている対策です。足元からの温暖化防止対策にもっと力を入れる姿勢が、日本政府に求められています。


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