2005年4月8日(金)「しんぶん赤旗」

侵略美化の歴史教科書

各国メディア批判

日本の内政超えた問題


 日本の中学校教科書検定で侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書が合格し、他の歴史教科書でも「従軍慰安婦」の記述が消えるなど侵略の記述が弱まったことに、アジア諸国から批判が相次いでいます。


「人類の正義に反する」

人民日報

 【北京=菊池敏也】中国共産党機関紙、人民日報六日付は、文部科学省が侵略戦争を美化した「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史教科書を検定合格とした問題で、「日本の右翼教科書は反面教材」と題する評論員の論評を掲載しました。

 「この教科書に何らかの存在価値があるとすれば、反面教材にできることだ」と指摘。「つくる会」のメンバーが、歴史的事実を反映した教科書に対して「自虐史観」「反日教育」と攻撃していることにふれ、「ねじ曲がった心理状態と病的な編集方針では、必然的に欺まんに満ち、わい曲された劣悪な内容の『製品』をでっちあげることになる」と批判しました。

 また、「侵略を美化し、史実をわい曲し、責任逃れをする右翼教科書は、人類の正義と良識に対する挑発であり、すべての被害国の人びとの感情をひどく傷つけ、日本の青少年の思想を害するものだ」と厳しい評価を下しました。日本の右翼勢力がこの教科書への海外からの批判を「内政干渉」としている点に対しては、「アジアの隣国に対する日本軍国主義の対外拡張の史実をごまかし、改ざんすることにかかわるもので、日本の内政の範囲を超えているのは明らかだ」と反論しました。

 さらに、教科書問題の本質は、「侵略の歴史を日本が正しく認識できるかどうか、正しい歴史観で若い世代を教育できるかどうかだ」と主張。日本政府が「教科書検定制度の特殊性」を口実に責任逃れしていることにも言及し、自国の歴史上の誤りを詳しく教科書に盛り込んでいるドイツやフランスの例を引き、こうした言い分は「成り立たない」と強調。日本政府の態度は、「この反面教材に醜悪な一筆を加えるだけだ」と批判しました。


「日本は平和に危険な要因」

香港各紙

 香港各紙も日本の歴史教科書に厳しい目を向けています。

 文匯報六日付は「歴史を改ざんし反省を拒みながら、どうして国連常任理事国に入れるのか」と題する社説を掲載。「右翼団体『新しい歴史教科書をつくる会』が編さんした『新しい歴史教科書』は、なんらはばかることもなく侵略戦争の歴史を美化し、歴史的事実を改ざんしており、おろかにも侵略の歴史をくつがえすことをたくらんでいる」と論評しました。

 「日本は、自らが引き起こした侵略戦争で被害を受けた国への謝罪と賠償を頑固に拒絶し、小泉首相は、第二次世界大戦の戦犯をまつる靖国神社に四年続けて参拝した。日本は急速に軍備を拡大し、なんとしても平和憲法を改定して自衛隊の海外派兵を全面的になしとげようとしている」

 「こうした動きは、日本が依然として、世界の平和と安全にとって潜在的に危険な要因となっていることを示している。このような国家が、国際社会の安全保障問題で重要な決定をする場に参加する資格はない」と批判しました。

 明報六日付は、「中国と韓国が手をとりあい、日本に反撃」と題する社説で、「日本の文部科学省は、中国や韓国などアジアの国家と人民の強い反対を顧みない」とのべました。

 大公報七日付は、「日本、歴史をゆがめてアジアの人たちの共通の敵となる」と題する記事を掲載し、中国、韓国両国政府とメディア、市民の抗議や批判の動きを詳しく伝えました。


政治的緊張は日中経済に影響

海外紙が報道

 英紙フィナンシャル・タイムズのアジア版六日付は、教科書検定問題を一面トップで大きく報道、「中国の緊張が日本を悩ませている」と伝えました。

 子どもと教科書全国ネット21の俵義文事務局長が、五日の記者会見で「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を示しながら侵略戦争美化に抗議した写真を大きく掲載しました。

 また、日本資本のスーパーが襲撃されたり、日本商品の不買運動が広がっていることを報じ、日本企業が標的にされたことは、政治的緊張が経済関係に影響していることを意味すると述べました。

 パリで編集されている英字紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューン六日付も一面で、「日本の教科書に新たな怒りが爆発し、アジアの緊張を高めている」と報じました。


歴史書き換えで日本に抗議の嵐

英紙タイムズ

 【ロンドン=西尾正哉】英紙タイムズ六日付は東京発の記事で日本の教科書検定問題を取り上げ「戦争の歴史の書き換えで日本は抗議の嵐に直面している」「中国と韓国は怒りを込めて抗議し、日本政府が軍国主義の過去を覆い隠していると告発している」と伝えました。

 「すべての教科書が従軍慰安婦についての記述を削除し、南京大虐殺の死亡者数を少なく見積もっている。第二次世界大戦中の中国と韓国の人たちの強制労働についての記述を簡略化した」と指摘しました。中国、韓国両政府が公式に抗議していることや中国で日本製品の不買運動が起きていることも報じました。

 「日本の教科書は何十年もアジアで怒りを引き起こしてきた」とし、「過去についてあまりにも無批判な見方を提供している」と批判されていることを紹介しました。


ソウル市長が糾弾声明

石原都知事の「三流政治」発言

 韓国の首都ソウルの李明博(イ・ミョンバク)市長は五日、「石原東京都知事の妄言を糾弾する」と題する声明を発表しました。声明は、石原知事が三日に民放テレビで盧武鉉(ノ・ムヒョン)韓国大統領が歴史問題で日本を批判していることを「三流政治」と決め付けたことに対し、「時代に合わない極右的な挑発」だと批判しています。

 また、石原知事は侵略戦争を美化する教科書の採択の中心的な役割を果たしていると指摘。日本政府に対しては、歴史の反省に立って「アジアの共同繁栄と人類の幸福に積極的に寄与すべきだ」と求めています。

 ソウル市と東京都は姉妹都市の提携関係にあります。さらに、李市長は盧大統領の与党「開かれたウリ党」と対立関係にある保守野党ハンナラ党の有力政治家です。

 それにもかかわらず、盧大統領に対する攻撃に反論した理由として、李市長は記者会見で「東京都知事が国家元首を直接に攻撃し卑下する発言をしたことは、国益の面で深刻だと考えた」と説明。「わが国の政治が三流だという石原の発言は四流、五流の妄言だ」と怒りをあらわにしました。


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