2005年4月6日(水)「しんぶん赤旗」

教科書検定に批判


韓国 過去の過ちを合理化

 韓国の外交通商省は五日、文部科学省が検定合格とした中学生用教科書について「わい曲された歴史教育を通じて、未来の世代が平和と共存、協力の方向に進むことができるのか憂慮を禁じ得ない」とする声明を発表しました。

 声明は「過去の過ちを合理化、美化する内容が含まれていることに遺憾の意を表明する」とし、日本政府に「人類の普遍的な良心と判断、客観性に基づいた歴史教科書の記述」を求めました。

 一方で、「少なくない教科書が韓日合併の強制性と韓国国民の抵抗の事実を記すなど、比較的客観的な記述をめざしている」とし、「これこそ日本の良識ある知性と、市民の歴史認識」だと評価しました。

 また、一部の公民教科書で竹島(韓国名は独島)が日本固有の領土だと明記されたことに対し、「植民地支配を正当化し、わが民族の解放の歴史を否認するもの」だと批判しています。

 李揆亨(イ・ギュヒョン)外交通商省スポークスマンは記者会見で、教科書問題は日本政府の歴史認識の問題であり、竹島問題は韓国の主権の問題だとし、二つの問題を分けて対応する考えを表明。「教科書の是正と採択阻止のためには、政府だけでなく、韓日両国の良識ある市民団体間の協力と活動が求められている」と述べました。

 市民団体・労組などがつくる「アジア平和と歴史教育連帯」(アジア連帯=旧・日本の教科書を正す運動本部)は五日、ソウルで記者会見し、「侵略戦争を美化する現行教科書に比べてほとんど改善されていない」と強く非難しました。ソウルの日本大使館前では同日、さまざまな団体の抗議行動が相次ぎました。

 アジア連帯は「危険な教科書が日本の各地域で採択されないよう運動していく」としています。

中国 正義と良識への挑発

 【北京=菊池敏也】中国の喬宗淮外務次官は五日、阿南惟茂大使を中国外務省に呼び、文部科学省が同日、教科書検定結果を公表したことについて抗議し、「厳正な申し入れ」をしました。日本政府が中国政府の「再三の申し入れ」にもかかわらず、侵略戦争を否定、美化した「つくる会」の歴史教科書を合格としたことに「憤り」を表明しました。

 喬次官は、「つくる会」の教科書が「侵略にも功績があったと公然と鼓吹していることは、人類の正義と良識に対する挑発であり、すべての被害国人民の感情を著しく傷つけ、日本の青少年の思想にとっても有害だ」と厳しく批判しました。

 喬次官は日本政府に対し、「侵略の歴史を反省するという公約を誠実に履行し、直ちに有効な措置をとり、悪影響を除去する」よう要求しました。

日本の未来像を疑う

シンガポール華字紙聯合早報元論説委員 黄彬華氏

 文部科学省が五日、日本の侵略戦争と植民地支配を肯定し美化する中学生用歴史教科書を検定合格としたことに対し、シンガポール華字紙聯合早報・元論説委員で日本での留学経験もある黄彬華氏(68)は、同日午後、本紙の電話取材に次のように語りました。

 第二次世界大戦が終わってもう半世紀以上もたったのに、日本はなぜ、いまだに反省しないのか、アジアから見ると非常におかしいんですね。いつまでも、くりかえしこういう問題で対立の火種を作り出すのではなく、なぜ一緒に新しい時代を迎えようとしないのか、今の時期に何のためにこういうでたらめな歴史教科書を検定で合格させるのか、日本の姿勢や未来像を疑わざるをえないんですね。

 国連の安全保障理事会の常任理事国入り問題でも、ドイツが名乗りをあげても誰も問題にしないのに、日本だと問題になる。やはり、人間や国際社会では正しいか正しくないことについての基準が必要です。国連は、そもそもファシズムと軍国主義を二度と起こさないという決意でつくられたんです。ところが、日本は過去の軍国主義の歴史を清算しないまま、国連の中心に入ろうとしています。ここに問題があることをしっかり理解すべきです。

 過去を反省しない歴史教科書で学ぶ若者が、その思想を受け継いで国際社会に出ていくと考えたら、こわいですね。またいつでも問題が発生するでしょうし、国際社会はそういう日本を決して許さないでしょう。


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