2005年4月6日(水)「しんぶん赤旗」

侵略美化の教科書 再合格

文科省検定

全教科書 「慰安婦」消える


 文部科学省は五日、来年度から中学校で使われる教科書の検定結果を公表しました。侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが執筆した歴史と公民の教科書(いずれも扶桑社刊)が再び合格しました。「つくる会」は前回0・039%にとどまった採択率を10%にすることを目指しています。市民団体などは「教育現場に持ち込ませない草の根の運動を広げよう」と呼びかけ、中・韓両政府が日本政府にたいし抗議と遺憾の意を表明しました。


 「つくる会」歴史教科書は日本の侵略戦争を「大東亜戦争」と表記。「自存自衛のため」の戦争で、アジアの解放につながったかのように記述しています。南京大虐殺や強制連行、従軍慰安婦などアジアの人々への加害の事実を隠し、植民地支配を正当化する内容となっています。

 一方、政府自民党の圧力と「つくる会」の攻撃で、従軍慰安婦の記述がすべての教科書の本文から消えました。「強制連行」など加害の事実にかんする記述も大幅に減りました。

 子どもと教科書全国ネット21など十六団体は同日、共同記者会見を開き、「つくる会」教科書は日本国憲法を否定し、侵略への反省を表明してきた政府の国際公約にも反すると指摘。「合格させた日本政府の責任は重大」と批判しました。アジア諸国からも抗議の声があがっています。

「進化」など復活

 中学校の教科書検定は四年ぶり。学習指導要領の範囲を超えた「発展的な学習内容」の記載が認められ、理科や数学で前回の検定時に削られた進化・イオン・二次方程式の解の公式などが復活しました。「発展的内容」は「すべての子どもが学ぶ必要がない」とされています。今回の検定には百三点の申請がありました。保健体育の一点が不合格となりましたが、年度内に再申請して合格しました。


認めた政府の責任重大

市田書記局長

 日本共産党の市田忠義書記局長は五日、歴史教科書問題について次のような談話を発表しました。

 一、「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史教科書が四年前に続いて、再び、文部科学省によって検定合格となった。

 今回の歴史教科書も、太平洋戦争を「『自存自衛』のための戦争」と描くなど、侵略戦争美化の立場にたっている。侵略戦争と植民地支配への反省とその誤りの清算は、戦後日本の国際公約であり、日本がアジアの中で生きてゆくための絶対条件ともいうべきものである。それを否定する教科書が国内外からつよい批判をあびることは当然だ。検定合格とした政府・文部科学省の責任は重大である。

 一、侵略戦争と植民地支配についての歴史の真実を知り、その反省の上に平和と民主主義の憲法があることを学ぶことは、わが国の子どもたちが二十一世紀をいきる主権者として育つうえで欠かせない。わが党は、歴史教科書問題をはじめ、侵略戦争美化の風潮を克服するため、広範な国民とともに力をつくすものである。

 教科書検定 民間の出版社が編集した図書を文科省が審査し、合格した図書を教科書として使用することを認める制度。申請を受けた文科相は教科書調査官に調査を命じ、教科用図書検定調査審議会に諮問。検定審は修正が必要な場合は出版社に検定意見を文書で通知します。修正後の図書を再審査し、文科相は合否を決定。



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