2005年3月30日(水)「しんぶん赤旗」

主張

住友金属訴訟

「差別のない職場」をただちに


 住友金属工業の女性社員四人が、女性であることを理由にした昇格・賃金差別について是正を訴えていた裁判で、大阪地裁は、会社に約六千三百万円の支払いを命じました。

 訴訟で焦点の一つは、従業員には知らされていない、同社の「闇の人事制度」(人事資料)の存在です。

闇の人事制度で差別

 原告側は、「イロハニホ」の五段階に区分した従業員評価で女性は最低ランクの「ホ」にされていたと主張しました。

 判決は、「人事資料に基づく差別」を認めました。同等の能力を有する高卒事務職であっても男女間で評価や査定で「明らかに差別」し、人事資料に基づく「昇給・昇進等の運用」をしていたと認定しました。そのうえで、「賃金の男女格差は採用時のコースの違いによる」とした会社の主張については、「格差はコース別採用とは合理的関連がない」と退けました。

 会社が「性別のみによる不合理な差別」を行っていたと、裁判所が明確に判断しました。

 何がなんでも女性を差別する、そのためには「闇の人事制度」までつくる。憲法や女性差別撤廃条約を持ち出すまでもなく、こんな不当なやり方は即刻やめるべきです。

 住友金属の女性差別は、国会でも問題になりました。衆院予算委員会(二月二十二日)で、日本共産党の石井郁子議員は、同社が「真に公平で差別のない職場社会を実現」というコンプライアンス(法令順守)を掲げていながら、女性を業務内容や学歴に全く無関係にすべて最下層に処遇している事実を示し、政府に是正を迫りました。

 「言ってることとやっていることが違う、明らかにまずいことです」と尾辻厚生労働相が答えたのは当然です。

 住友金属の職場では、出産後も働き続ける女性に、「犬や猫でも母親の手で子どもを育てているのに、君は保育所に子どもを預けている。君は犬畜生にも劣る」といって、退職を強要してきました。

 この実態に、南野法務相は「耳を疑った。もっと女性を応援しなければならない」と答えています。

 もともと、原告が裁判に訴えざるを得なかったのは、政府が、男女雇用機会均等法に基づく調停で、会社の主張を認める案を提示したからです。十年間も差別是正を遅らせてきた責任は政府にもあります。

 判決を契機に、政府は、女性差別の是正にむけて、とりくみを進める責任があります。

 住友金属に賠償命令が出されたのは、原告らの訴えに共感があったからです。「闇の人事制度」が明らかになったのも、共感の広がりの反映です。意にそわないまま退職した人をはじめ、社の内外を問わず支援の輪は大きくなっています。

相次ぐ勝利の流れ

 原告の一人は、働き続けることへの過酷な差別があり、忘年会にも声がかからないという嫌がらせがあった当時の一九六六年、住友セメント裁判で、「結婚退職制は違法である」との判決が出されたことが大きな支えになったとのべています。

 住友グループでは、住友生命、住友電工、住友化学の女性たちの訴えを認める和解が相次ぎました。「結婚・出産したら退職せよ」という会社の論理は、もう通用しない時代になっていることを会社は自覚すべきです。

 住友金属は控訴して争うのではなく、ただちに女性差別の解消に踏み出すべきです。


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