2005年3月28日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

木造住宅

地震で1千万戸が危険 耐震対策待ったなし

進まぬ公費支援制度


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 福岡沖地震から一週間がすぎました。被害の大きかった木造住宅の耐震化を急速に進める必要があります。全国の木造住宅約二千四百五十万戸のうち、一九八一年以前の耐震性が不十分な住宅は約一千万戸といわれています(国土交通省)。

 新しい基準以後の建物被害が少なかった阪神・淡路大震災の例からも、耐震強化は有効策です。補強工事にはまとまった資金を必要とします。

 住宅の耐震診断や補強工事に公的支援制度を設けている自治体がありますが、県段階では七つにとどまっています。まだまだ少数です。千葉県と愛知県にみてみました。

千葉県には制度なし 診断助成は3市だけ

 一九八七年十二月、千葉県東方沖地震に見舞われた千葉県。震度5の強震にブロック塀が倒れるなどして二人が死亡、建物の半壊、一部損壊は七千棟にのぼりました。山間部では地割れも多数発生、埋め立て地では液状化による泥水の噴出なども起こりました。

 寺の石灯ろうが倒れて死者が出た茂原市に、当時、住んでいた大山多恵さん(66)は、「屋根の瓦が落ちて壁にヒビが入った。またいつ起きるか分からないし、住民まかせにせず行政の支援がほしい」と話します。

千葉市来月から改修助成を新設

 千葉は、農業県として古い木造住宅が多く、地震時の死亡原因となる建物の倒壊の危険は計り知れません。

 しかし、木造住宅耐震診断助成制度があるのは、千葉、佐倉、市原各市など一部だけ。死者が出た茂原市もありません。同市の日本共産党の加藤古志郎市議は「八七年の地震で深刻な被害が出た市として、住宅の耐震診断・補強工事への助成制度は急務」といいます。

 政令市の千葉市内の木造住宅は十二万九千八百戸、うち耐震診断の基準となる八一年以前の建築は六万四千戸(九八年総務庁調査)。半分が、要診断住宅です。

 日本共産党市議団と千葉土建一般労働組合は、耐震診断助成と改修助成制度の実施を長年にわたり市に要求。こうした運動が実を結び、二〇〇三年十月から、木造住宅とマンションの耐震診断への助成制度が実現しました。来月には改修への助成制度が新設されることになりました。すでに、十六件の改修助成が予算化されました。

 市建築指導課の内山秀和課長は「尊い人命や個人財産である家屋を守りたい」と意気込みを語ります。

国の見解を踏襲「県の姿勢残念」

 市町村や震災対策の専門家からは、市町村まかせにせず、県も助成制度をつくるように求める声があります。

 しかし、千葉県政は「個人財産である住宅への再建支援はしない」という国の見解を踏襲しています。

 千葉県学者研究者の会(代表世話人・城丸章夫千葉大学名誉教授)は今月、県に地震防災についての質問状を提出しました。七日、記者会見した藤井陽一郎茨城大学名誉教授は「政府の見解から発展しない県の姿勢は残念です。県でも直下型地震への対策として構造物の耐震強化は急務です」と指摘しています。(千葉県・浅野宝子)

愛知県で2万6千棟を診断 「倒壊の恐れ」半数超

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 「いつ起きてもおかしくない」といわれて久しい東海地震。被害を最小限にくい止める取り組みが急がれます。昨年二月に自宅の耐震補強工事をした名古屋市南区の萩原とし子さん(80)は、「最初のゆれで逃げ出せるよう、百三十万円かけて工事をした。本当は家がつぶれないようにできたらいいけど。収入は年金しかないしね。地震で住めなくなったらどうなるのか…」と話します。

県内73市町村で無料の耐震診断

 国の中央防災会議が二〇〇一年に行った東海地震の震源域の見直しで、地震防災対策の強化地域が新城市一市から名古屋市を含む五十八市町村に広げられた愛知県。東海地震と東南海地震が同時に発生するという最悪の場合、死者約二千四百人、負傷六万六千人。建物の全壊九万八千棟と県の防災会議地震部会は被害を予測しています。

 阪神・淡路大震災では人的被害の八割が、倒壊した家屋の下敷きになって発生したことから、被害を抑えるためには建物の倒壊を減らすことが必要と愛知県は考え、一九八一年五月以前の古い耐震基準で建てられた木造建築物を対象に県内七十三市町村で無料耐震診断、五十七市町村で改修費用を助成しています。

 〇二―〇三年度に二万六千九十五棟が無料耐震診断をうけ、そのうち一万四千五百棟、実に半分以上が「倒壊または大破壊の恐れ」があるという判定を受けています。診断結果は耐震改修工事が待ったなしであることを示しています。

助成の上限額が補修のネックに

 名古屋市ではさらに深刻で、対象となる八一年以前の木造家屋十七万棟にたいし無料診断をうけた、あるいは申し込んだのは約八千二百棟。うち約七割が耐震改修工事が必要という判定が出ています。しかし、実際に改修に進む市民はさらに少なく、四百二十棟ほど。

 平均百七十三万円の費用がかかっているのに助成額の上限は六十万円。住民が高齢化し、負担能力も低くなっているのに、平均百万円以上の負担が必要になり、「補修はしたいが簡単にはいかない」状況です。萩原さんは、「高齢者は、なかなか自分からやろうというふうにならん。行政は真剣に考えて、わたしらの手の届く制度にしてほしい」と話します。

 四月の名古屋市長選に革新市政の会から出馬する、くれまつ佐一候補は「助成拡充とともに、家具倒壊防止などにも広げ、制度を使いやすくする必要がある」と訴えています。(竹森敏英)


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