2005年3月22日(火)「しんぶん赤旗」

国連改革でアナン報告

「貧困を過去の歴史に」

富裕国へ努力呼び掛け


 国連のアナン事務総長は、二十日公表の国連改革に関する報告書で、「貧困を(過去の)歴史とする」ため、各国、特に富裕国の政府の努力を呼びかけました。

 報告書は、現在なお十億人以上、人類の六人に一人が一日一ドル(約百五円)未満で生活し、慢性的な飢餓、疾病、劣悪な環境の下に置かれていると指摘。この種の貧困は「悲しいことだが避けられないこと」とみられてきたが、「今日では、こうした見方は認識としても、道義的にも正当化できない」と述べ、「貧困が人の命を奪っている」現状を警告しました。その一例として「蚊帳や一ドルの治療費がないために、マラリアの病原体を持った蚊の一刺しで子どもが命を落としている」ことを挙げています。

 二〇〇〇年九月開催の国連ミレニアム・サミットで確認された二〇一五年までに貧困と飢餓を半減させる目標を達成するため、特にアフリカ諸国に焦点を当てながら、国際的努力と各国、現地の努力の強化・調整を訴えました。

 報告書はまた、世界の安全保障と開発・発展への人間の権利とが密接に結びついていることを強調。各国政府に対し、雇用、所得、歳入増を生み出すような成長志向の経済政策をとり、「中小企業に有利な法制上の環境づくり」を進めるよう勧告しました。

 富裕国に対しては、最貧国の対外債務を帳消しにし、発展途上国の輸出品に対する障壁を撤廃すべきだと述べています。また、途上国への政府開発援助(ODA)を国民総生産(GNP)比0・7%にする目標を達成していない富裕国は、二〇一五年までに達成する「日程表の確定」を求めました。欧州諸国が0・7%を上回るか、達成を誓約しているのとは対照的に、米国はイラクやアフガニスタンへの援助を別にすれば0・13%にすぎず、日本も0・20%にとどまっています。


論議呼ぶ武力行使の原則

 二十日に公表された国連改革に関するアナン国連事務総長報告は、武力行使が許される条件については、昨年十二月に発表された国連改革ハイレベル諮問委員会の勧告を基本的に踏襲しつつ、武力行使が容認される原則に関して安全保障理事会が決議を採択するよう提案しています。

 ハイレベル諮問委報告は、国連憲章第五一条で定められた各国による自衛権の行使については、「脅威が差し迫ったものである限り」「先行的自衛」(先制攻撃)権の行使を認めると提言しました。

 「先行的自衛」論に対しては、「武力攻撃が発生した」後に自衛権が行使できるという五一条の文言に照らしても批判があります。

 しかし今回のアナン報告は、自衛権には「すでに発生した攻撃と同様に差し迫った攻撃も含まれると法学者は以前から承認してきた」と表明。諮問委の勧告を支持する立場にたっています。

 諮問委報告は「差し迫っていない脅威」に対しては、安保理が「予防的な武力行使」を承認することはありうると提言しました。この点についてもアナン報告は、「国連憲章は安保理に対し、予防的なものも含めて、軍事力を行使する全面的な権限を与えている」として、諮問委の提言を容認しています。

 その上で、「武力行使をいつ容認すべきかの導きとなる原則を定める決議を安保理が採択すべきだ」と勧告。最終結論を安保理に委ねています。

 アナン報告は、安保理が予防的な武力行使を認めるべき事例として、集団虐殺や民族浄化の予防に言及しています。

 しかし、ブッシュ米政権が掲げるような、米国の気に入らない政権を打倒する先制攻撃戦略を原理的に規制する規定は盛り込まれておらず、今後、国際的な議論を呼びそうです。(坂口明)


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