2005年3月19日(土)「しんぶん赤旗」

イタリア首相 迷走

イラク撤兵発言

米英圧力に1日で変更?


 【パリ=浅田信幸】イラク派遣部隊の段階的撤退発言から、米英の圧力で一日にして動揺―。イタリアのベルルスコーニ首相の迷走に、野党やマスコミから「国家の信頼性を損なう言動」だと厳しい批判が巻き起こっています。


不可能ならそれは不可能

 同首相は十六日、イラク派遣部隊の撤退問題について「期待をのべただけ。不可能だというのなら、それは不可能なのだ」と発言。前夜に「派遣部隊を九月から段階的に削減し始める」とのべていたことを覆しました。

 段階的撤退発言は、米、英、韓国に次ぐ三千三百人という第四の大部隊を派遣しているイタリアのことであり、ニュースは世界を駆けめぐりました。

 もともとイラク戦争反対の世論が強かったイタリアです。今月初め、イラクで拉致されていた女性記者が解放された直後に、米軍の銃撃を受け、車に同乗した情報機関員が殺された事件で、イラク撤退の世論は昨年末の50%から70%にまで急上昇していました。

米大統領と電話で会談

 部隊を段階的に撤退させるとのベルルスコーニ首相発言に仰天したブッシュ米大統領は十六日、同首相と電話会談。ホワイトハウスでの記者会見で「イタリアの政策に変化はない」との確約を得たと発表しました。

 一方、撤兵計画で事前に相談したと名指しされたブレア英首相。ブッシュ大統領の「ペット」と世論から批判を受け評判を落としてきた同氏は今、総選挙準備の最中にあり、伊軍部隊のイラク撤退は英軍増派をもたらすとあって、こちらも困惑を隠せません。「(伊首相の発言は)勘違いだ。伊政府も英政府もイラク撤退の日程を決めていない」と一蹴(いっしゅう)しました。

 この圧力に屈したのか、もともと不正確な話だったのか。ベルルスコーニ首相は「空中に楼閣を築いたジャーナリストの責任だ」と八つ当たり気味。これに対し十七日付伊紙レプブリカは「ブッシュ(米大統領)とブレア(英首相)、ベルルスコーニにストップ」の一面見出しで報道。「私が言ったことを私はけっして言っていない。そう言ったのだとしたら、私は自分の言葉を曲解していたのだ」と首相が語る風刺漫画を載せました。

 野党勢力の指導者プローディ氏(前欧州委員長)は、「わが国の尊厳をもてあそぶな」、左翼民主党ファシノ書記長は「まったく文明国にふさわしくない」と首相の言動を批判。

 十七日付伊紙コリエーレ・デラ・セラは「まじめな国では、多くの人の生死にかかわる問題で、首相がこれほどあいまいな発言に熱中することはありえない」「(これでは)国の外交政策の信頼性が深く傷つけられるだけだ」と厳しく戒めました。


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