2005年3月16日(水)「しんぶん赤旗」

主張

東富士演習場

米軍優先使用の保証「密約」


 日本に返還したあとも米軍が東富士演習場(静岡県)を「毎年最大二百七十日、優先使用する」―こんな日米両政府の「密約」がありました。日本共産党の紙智子参議院議員が、米政府解禁文書をもとに国会質問でとりあげました。

 東富士演習場は一九六八年に自衛隊の演習場になりました。返還前に政府は、「自衛隊が主人公、米軍はお客様になる」と説明していましたが、米軍が「主人公」のままです。二〇〇一年は沖縄米海兵隊が百九十日も使用しています。「密約」を裏付けています。

日本の要請で秘密に

 日米両政府は、六八年七月、「使用転換及び使用条件の変更にかんする協定」を結びましたが、全容は秘密のままです。今回あきらかになったのは、米側作成の「東富士演習場の解放にかんする協定案」とその付属「了解合意覚書」。「最終案」と報告されており、これが、日米政府協定になったとみられます。

 「協定案」は、米軍が、返還後も共同使用の形で東富士演習場を優先使用できると明記したばかりか、東富士演習場と北富士演習場(山梨県)が使用できないときには、日出生台(ひじゅうだい)(大分県)を使用できることまで明記しています。

 付属の「覚書」では、米軍に「毎年、最大二百七十日間に及ぶ富士演習場区域の使用の優先権」を明記。さらに、優先使用の期間内は演習場の65%を使用、年間三十日間は東富士と北富士の全演習場を使用できるとも規定しています。当時高まった演習場返還運動を無視できず、表向きは自衛隊の基地を一時的に米軍が共同使用するという形にして、矛先をそらすためでした。しかし、国税を使い、自衛隊が管理・整備した演習場を、米軍がいつでも必要なときにやってきて、長期に優先使用するのですから、米軍の「専用基地」と実質的には同じです。

 ひどいのは、日本政府が、二百七十日間の優先使用を隠しとおすために、米政府に、協定本文ではなく秘密扱いの付属「覚書」に書きこむように頼み込んだことです。在日米軍司令部の米太平洋軍司令部あて書簡は、日本側が「合意内容の公表は遅らせたいと何度も口にした」とのべています。事実がもれて返還運動を刺激することをおそれたのです。国民をだますなど言語道断です。

 二百七十日間の優先使用は、「一年のうち半数以上米軍が使用するというのでは主客転倒となる」(七一年二月二十七日衆院予算委員会 中曽根防衛庁長官=当時)との政府統一見解にも反します。「東富士のごく一部」なので「主客転倒に当たらない」(外務省『日米地位協定の考え方(増補版)』)という言い分は通用しません。

 「密約」が示すことは、米軍いいなりでは米軍基地の全面返還はできないということです。共同使用では、米軍基地も自衛隊基地も、国民の手に取り戻すことはできません。東富士演習場の地権者団体である「東富士演習場地域農民再建連盟」がキャンプ富士への米軍海兵隊部隊の移転に反対するのは当然のことです。

世界で日米共同作戦

 米政府は、米軍事態勢再編のなかで、基地の共同使用を拡大強化しようとしています。「戦闘から平時までのあらゆる作戦任務で、同盟国とともに行動できる能力を強化する」(〇四年十一月十五日ファイス米国防次官)ためです。

 世界で共同作戦をするための基地強化と自衛隊の海外派兵態勢づくりに反対しましょう。


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