2005年3月13日(日)「しんぶん赤旗」

主張

児童虐待の防止

相談体制を強めて命を救う


 児童虐待の相談体制を強めるために、児童福祉法施行令が改正されることになりました。四月一日の施行です。

 改正されるのは、児童相談所に配置されている児童福祉司の配置基準です。現行の人口おおむね「十万―十三万人に一人」を、「五万―八万人に一人」に変更します。児童福祉司の受け持ち人口を半分にし、人員の大幅な増員となります。

相談は10年間で16倍に

 児童福祉司は都道府県と政令指定都市が採用する職員です。児童相談所で、児童の福祉にかかわる相談に応じ、専門的指導にあたります。

 しかし、児童虐待の相談は十年間で十六倍に増えているにもかかわらず、児童福祉司は一・六倍にしか増えていません。児童相談所がかかわりながら、虐待を受けた児童の命を救えないケースが後を絶たず、児童福祉司の増員が急務です。

 政府は、この事態に地方交付税の措置で対応してきました。二〇〇四年度は「人口六万八千人に一人」の児童福祉司を配置できるよう地方交付税で算定してきました。しかし、地方交付税の使途は、地方の裁量にまかされており、六割以上の自治体がこの水準に達せず、自治体間の格差も広がっていました。

 児童福祉法施行令の改正によって、すべての都道府県と政令指定都市は「人口五万―八万人に一人」以上の児童福祉司を配置しなければなりません。

 二〇〇四年五月時点で、児童福祉司一人が受け持つ人口が「八万人」を超えているのは十五都県三政令都市もあります。全国児童相談所長会が要望していたのは、「五万人に一人」の児童福祉司の配置です。この基準を満たすのは、青森、宮城、鳥取の三県と京都市だけです。全国で積極的なとりくみが必要です。

 相談体制を強化するうえで、児童相談所の増設は欠かせません。国の基準は、人口五十万人に最低一カ所です。しかし、この基準を満たしているのは、都道府県・政令都市の三割にすぎません。

 その点で、青森県(人口約百四十八万人)が、児童相談所を二十五万人に一カ所にまで増設、児童福祉司も二万九千人に一人まで増員して、児童虐待の防止に効果をあげていることが注目されています。

 青森県では、一九九九年と二〇〇〇年に幼い女児が虐待で死亡する痛ましい事件が相次ぎました。これを受け、支所を含め四カ所(一九九七年)だった児童相談所を六カ所(二〇〇二年)に、十六人だった児童福祉司を五十七人に増やしました(〇四年は五十一人)。

 増員によって、複数体制での調査と四十八時間以内の安否確認で、事態が深刻になる前に対応ができるようになりました。保護者への子育て相談、学校・保育所・保健所との連携といった予防的とりくみも充実させています。職員の研修に力をいれ、専門職として息の長い活動を保障しています。その結果、虐待相談の件数が〇二年を境に減少するようになっています。

国際的にはまだ少ない

 今回、児童福祉司が増員されることになったとはいえ、日本の基準は国際的にみれば遅れています。

 日本の児童福祉司にあたるソーシャルワーカー一人当たりの担当人口は、イギリスが六千人、ニューヨーク市が四千人弱、カナダ・オンタリオ州は三千人弱です。

 今回の改正は世論の反映です。さらに相談体制の強化を求め、児童虐待防止の力としていきましょう。


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