2005年3月12日(土)「しんぶん赤旗」

主張

農業・新基本計画

自給率向上へ実効ある政策を


 食料・農業・農村基本計画の見直しをすすめていた政府の審議会が、九日、新基本計画(案)を答申しました。この計画は、食料・農業・農村基本法にもとづいて、十年程度を見通した政策の基本をしめすもの。五年ごとに見直すことになっています。前の計画は、基本法制定後の二〇〇〇年三月に閣議決定されたものでした。

危機招いた農政そのまま

 新基本計画は、焦点になっていた食料自給率目標について、達成の期限を二〇一〇年から一五年に先送りしてカロリーベースで45%と前計画と同じ水準にしています。そして、カロリーベースより高めに出る生産額ベースの自給率目標を併記しました。自給率目標を達成する取り組みとして、消費者には国産食料の消費拡大を、農業者には大規模経営に生産の大部分を集中する農業構造改革を強調しました。

 農業生産対策や農業の担い手対策では、アメリカや財界の要求する輸入自由化、市場任せをさらにすすめ、政策対象を重点化・集中化するとしています。経営安定対策の創設や株式会社の農業参入を含む法人化などを条件に、事実上、中小農家や産地の排除につながる政策の推進を鮮明にしました。これらは、新計画の中でもとくに重大な問題です。

 前基本計画の策定以来、BSE(牛海綿状脳症)の発生、輸入農産物からの残留農薬の検出や産地の偽装など、食をめぐる事件が続出しました。輸入野放しと価格政策の放棄による生産者価格の暴落で大規模経営を含む多くの農家と産地が打撃をうけています。主要国で最低水準の食料自給率(40%)は、目標に近づくどころか低下傾向が続き、農業従事者の高齢化や農村集落の崩壊もすすみました。

 その点は、答申も「食の安全にたいする信頼が大きく揺らいでいるほか、農業者の高齢化と減少による生産構造の脆弱(ぜいじゃく)化等危機的な状況が深化」していると、認めています。

 原因はどこにあるのでしょう。自民党農政は、農業貿易の拡大を最優先し、助成政策による増産を否定するWTO(世界貿易機関)農業協定を全面的に受け入れ、国境措置(輸入規制や安全確保)や価格政策を放棄するようにしてきました。これが問題だということは、多くの関係者が実感していることです。

 見直さなければならないのは、多くの生産者に大きな打撃を与えている輸入野放し、生産や価格を市場任せにした政策です。ところが、答申は従来の政策をいっそう強化することを前提にしています。これでは、自給率目標も農業の多面的機能も保障できません。

生産を担っているのは

 国民が、それぞれの立場で努力することはもちろん大事です。新計画が展開している、食料の安全性確保や地産地消の推進、農業の多面的機能を発揮させることは当然です。

 しかし、国政にもっとも求められているのは、適切な国境措置や生産者価格の下支えなど、国が本来果たすべき政策の確立です。

 ほんのわずかしかない大規模経営や法人経営だけを優遇するのでなく、現実に生産を担っている多くの農家と産地が意欲をもてるようにしてこそ、担い手の確保も生産の拡大も可能になります。

 農政を抜本的に転換し、農業を基幹産業にふさわしく再建し、日本の自然的・社会的な条件を本当に生かした食料・農業政策の確立をめざすことが、ますます重要になっています。


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