2005年3月11日(金)「しんぶん赤旗」

横浜事件 再審支持

拷問の事実 認められた

元被告遺族 「国は謝罪して」

特高の立件手法に批判


 「歴史の重い階段を一つ上った」。横浜事件で再審開始を認めた十日の東京高裁決定を受け、元中央公論編集者故木村亨さんの妻まきさん(56)は東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見しました。


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横浜事件の再審請求抗告審で東京高裁に入る元中央公論編集者の故木村亨さんの妻まきさん(前列右から2人目)と弁護団ら=10日午前、東京・霞が関

 まきさんは第一次、二次請求の棄却を振り返り、「主文を見て一瞬負けたと思った。いつも棄却だったので」と照れ笑い。

 拷問の事実が認定されたことには「一番望んだ核心を判断してくれた」と評価し、「国は謝罪してほしい」と語ります。

 まきさんは、亨さんが一九九八年七月の亡くなる五日前に書き残し、死後に病室から見つかった「捨てし身の裁きにひろういのち哉」という句を両手で掲げ、「頑張ると言い続けてきた人たちの思いが報われた」と目を潤ませました。

 一次請求から弁護人を務める森川金寿弁護士(91)は「検察側の主張を粉砕した」と語り、新井章弁護士は「裁判所にとっても恥ずかしい足跡を自己批判する判断」と発言。環直彌弁護士も「主文の是非にとどまらず、原審が判断しなかったことまで詳細に検討している」と評価しました。


核心に取り組む

 小田中聰樹専修大教授(刑事訴訟法)の話 横浜地裁の原決定が治安維持法の効力がなかったとして再審開始を決めたのに対し、今回の決定は、特高警察が拷問により事件を作り上げたという横浜事件の事実問題の核心に真正面から取り組んでおり、正当と評価できる。戦争末期の言論弾圧の実態を明るみに出そうとするもので、改憲などの動きが進む現代にも教訓になる。再審請求した元被告ではない人物への拷問に関する警察官の有罪判決を新証拠と認め、当時の状況から元被告にも同様の拷問がうかがわれるとした判断も、元被告の訴えを誠実に聞き入れ、良心的だ。


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 治安維持法 一九二五年に制定され、四五年に廃止されました。国体の変革、私有財産制度の否認という目的をもった結社を組織したり、加入したり、宣伝することを禁じた結社禁止法。共産主義の運動だけでなく、思想そのものを弾圧する法律でした。二八年には最高刑が懲役十年から死刑に引き上げられました。四一年には神社や皇室にたいする冒涜(ぼうとく)罪を加え、さらに治安維持法での刑の執行を終わった人を引き続き拘禁できる予防拘禁制度まで導入しました。政府統計では、治安維持法による送検者は七万五千人余、起訴は五千人余。逮捕者含めると数十万人が同法で弾圧されました。


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