2005年3月8日(火)「しんぶん赤旗」

富士通子会社社員のたたかい

「この勤務記録 みて下さい」

15時間労働・ただ働きが常態化

月130時間残業で「うつ」

新人を同じ目にあわせない


 「サービス残業と長時間労働を社会に告発したい。ぜひ新聞でとりあげてください」。富士通の子会社に勤務する一人の男性が「しんぶん赤旗」関西総局(大阪市天王寺区)を訪ねてきました。労働基準監督署にも告発し、会社に損害賠償を求め提訴したといいます。 (隅田哲)


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会社のサービス残業を告発する中原将太さん。富士通四国システムズなど富士通関連会社が入るビルの前で=大阪市中央区

 この男性は中原将太さん(25)。富士通四国システムズ(本社・高松市)の社員です。大阪事業所に勤務していましたが、昨年四月うつ状態になり病気欠勤。十月から休職しています。

 「これを見てください」。中原さんは、会社が労基署に提出した自身の出勤・退出時間の記録を見せてくれました。

午前二時を過ぎる日も

 朝八時四十分までに出勤し退出するのは深夜午前零時前後、午前二時をすぎる日もあります。一日十五―十六時間労働が常態化しています。休日であるはずの土・日曜もいずれかに出勤。退勤時にタイムカードを打たなかったり、タイムカードを打った後で何時間も働いている日もあります。

 「他の人も残業しているので、自分だけタイムカードを打てる状況ではなかった。ぼくが働いていた二〇〇二年四月から〇四年四月までの二年間で、労基署が調べることができた残業代は百十六日分だけ。ほかの日も同じように働いていますが、記録がないんです」

 サービス残業の実態を一部でも明らかにできたのは、夜最後に帰る社員が氏名を記入する「退室表」などが残っていたからです。

 富士通の子会社で、中原将太さんは製薬関連のソフト開発に携わっていました。一日中パソコンに向かっています。二十―三十人の部署ですが、正社員は中原さんら数人だけ。ほかは外部から派遣されてくる社員です。

 数チームに分かれて作業する部署のなかで、ソフトの基盤をつくる中原さんの仕事は中心的位置にありました。各チームで起きるトラブルの対処も中原さんに集中しました。対処には、ソフト基盤をつくる作業と同程度の時間がかかりました。「月百三十時間ほどの残業をしていました」

 追い打ちをかけたのは〇三年十月、それまでの仕事に加え、別のソフト開発を命じられたことです。体調が悪くなり手のひらの発汗、不眠、尿漏れに悩まされます。上司に訴えると、「個人の理由で仕事を減らせない」「お前だけ六時に帰るのか。ちょっと生意気だ」と怒鳴られました。やがてうつ状態になり、仕事ができなくなりました。

過重労働で相次ぐ退職者

 同僚だった谷口俊樹さん(26)は証言します。

 「中原君の部署は、他の部署よりも遅くまで仕事をしていました。そのなかでも中原君は一番遅くまで残っていました。違う部署にいた私でさえ月最高で百時間くらい残業していましたね。でも実際タイムカードにつけたのは月二十時間ほど。あとはただ働きです」

 谷口さん自身、体調が悪くなり、〇三年八月に退職しました。

 中原さんと同じチームにいた二年先輩の男性社員も、同年六月に退職。派遣されてきた社員のなかでも「長時間労働に我慢できない」と職場を去った人がいました。十分な人員補充がないまま、新人の中原さんに仕事が集中していったのです。

労働者を守る法律を知って

 休職して五カ月のいまも病状が回復せず、部屋に引きこもりがちです。「病気になるまで労働者を守る法律があると考えてもみませんでした」。中原さんはインターネットで労働基準法を調べ、昨年六月、労基署に告発。会社は一定の不払い残業代を支払いました。

 さらに大阪弁護士会の法律相談をきっかけに昨年十月、損害賠償請求の裁判を起こしました。

 これに対し、富士通四国システムズは「過重労働があったのか、事実関係を調べているところなので現段階ではコメントできない」といいます。

 中原さんを弁護する大川一夫弁護士は「中原さんは、時間内ではこなせない仕事を会社に命じられ、深夜まで働いて朝に出勤し、また深夜まで働く過酷な労働をしていました。彼だけでなく、過重労働に苦しむ人が増えている」と指摘します。

 中原さんが関西総局を訪ねたのは、岡山の実家が「しんぶん赤旗」を購読していたので、「この新聞なら取り上げてくれるのでは」と思ったからだ、といいます。

 「ぼくは長時間過密労働で健康を売り渡してしまいました。春にはまた多くの新人が富士通に入社しますが、同じ目にあわせたくない。こんな労働をさせないよう、会社は改めてほしい」

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会社が労基署に提出した中原さんの労働時間の記録。朝8時40分までに出勤し帰るのは夜1時、2時を過ぎる日が続いています



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