2005年3月6日(日)「しんぶん赤旗」

主張

タクシー過当競争

安心して乗せたい、乗りたい


 タクシーの運転者が泣いています。過当競争で売り上げが減り続け、年収は平均二百七十六万円にすぎません。驚くほどの低水準です。低賃金を補うために、長時間働かざるをえず、過労による交通事故も増えています。このままではタクシーの安全・安心を危うくしかねません。

競争促進が弊害招く

 都市の繁華街や駅前では客待ちの空車タクシーで長蛇の列ができます。この三年間に全国でタクシーが一万二千九百台も激増しました。

 背景には規制緩和があります。タクシーは増えすぎて過当競争になるとさまざまな弊害があるため、台数、運賃などを規制していました。それが「競争の促進」を理由に相次ぎ緩和されました。二〇〇二年二月から、改正道路運送法が実施され台数規制が撤廃されました。このことが大きな影響を及ぼしています。

 不況で利用者が減った上に、大量増車や運賃値下げで競争が激化し、その影響がすべて運転者にしわ寄せされています。歩合給のため賃金が下がり続け、平均年収は十年前より百万円近くも激減しました。最低賃金さえ下回る事例が出ています。

 運転者の多くは、一回の乗務で朝から翌明け方まで走るような過酷な勤務です。残業や休日出勤も行い、労働時間は年二千四百八十六時間に達します。にもかかわらず、男性の常用労働者全体に比べて賃金は二百万円以上低く、労働時間は五百時間近く長いのです。

 安全・安心はタクシーの命です。公共交通を担う運転者が、まともに生活できない低賃金と過労を招く長時間労働でいいのでしょうか。適正な労働条件が欠かせません。

 過当競争が、すでに社会的な弊害を引き起こしていることは見過ごせません。交通事故は、一九九三年の一万六千八百八十一件から二〇〇三年は二万四千六百八十二件へと、十年間に五割も急増しました。

 事故増加の要因には運転者の過労があります。アンケート調査では「長時間労働で眠気を抑えられない」「疲れて安全確認がおろそかになる」という回答が七割にのぼります。

 運転中に脳出血などで意識を失うといった急性死は、〇三年に二十件も起きています。規制緩和前の年十人前後から倍増しました。利用者の安全に直結する深刻な問題です。

 都市で無秩序にタクシーが増えるばかりでは、交通渋滞の要因となります。排ガスで環境を悪化させ、地球温暖化の防止にも逆行します。

 かつて過酷なノルマを課せられ無謀運転を行う「神風タクシー」が社会問題になりました。「競争万能」でまたタクシーの安全と安心が壊されていいのかが問われています。

 いま重要なことは、弊害を招いている過当競争に歯止めをかけることです。安全・安心で利用しやすいタクシーの確立です。

 世界の大都市では、台数規制をしています。ニューヨークは一万二千台余り、パリは一万四千九百台、ローマは五千台に規制し、ロンドンは厳しいタクシー運転免許で実質規制(約二万台)しています(全国自動車交通労働組合総連合会調べ)。

規制緩和は転換して

 規制緩和に際して、衆参両院で付帯決議がされています。輸送の安全確保と適正な労働条件の確立、指導監督の徹底、不当な競争を引き起こす恐れのある運賃の排除などが盛り込まれています。政府はこれらを履行すべきです。

 タクシーの安全・安心を損なう規制緩和は見直すことを求めます。


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