2005年2月28日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

核燃料施設いりません

住民運動リポート


 日本の原子力発電の軸になっている核燃料サイクル路線が根底から行き詰まっています。それでも政府、電力会社は、無謀な計画を推進し、危険な関連施設の建設を強行しています。反対する住民の運動をリポートします。


原子力半島化 青森・下北

核のゴミ捨て場 いや

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高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター内のガラス固化体貯蔵ピット=青森・六ケ所村、04年9月

 青森県下北の「原子力半島化」が急速に進んでいます。

 日本原燃は二〇〇六年七月の操業開始をめざして昨年十二月、六ケ所村の再処理工場でウラン試験を開始しました。東通村では、東北電力の東通原発1号機が試運転を開始し、六ケ所村にはMOX燃料工場、むつ市には使用済み核燃料中間貯蔵施設、大間町にはMOX燃料だけを使う大間原発が計画されています。

 文字通りの核のゴミ捨て場です。国や電力業界、県の「安全第一に」の必死の宣伝にもかかわらず、関連施設の安全対策について県民の四割は「不満」と答え、「満足」「やや満足」は一割にも達していません(県の「県民意識一万人アンケート」=〇四年三月)。

 県民の不安を裏付けるように再処理工場はトラブル続き。マスコミも「ずさん管理またも」(デーリー東北、十九日付)と報道しています。

 核燃料貯蔵プールで水漏れが起き、二百九十一カ所の不正溶接が発覚。試験開始後も高レベル放射性廃棄物貯蔵関連四施設での設計ミス、施工ミスによる硝酸性溶液漏れ…。十七日の県市町村長会議で「原燃の責任のなさがはっきりした」と批判が飛び出しました。

 国と電力業界は、原発から出た使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料を軽水炉原発で使うプルサーマルを推進していますが、ひとつも実施されていません。日本はすでに約四十トンのプルトニウムを保有し、再処理すればプルトニウムがたまり続けます。

 きわめて毒性が強いプルトニウムは、核兵器の材料ともなる物質。ウラン試験から実際の使用済み核燃料を使った最終のアクティブ試験へと進めば解体が困難になり、事故が起きれば計り知れない影響がでます。

 青森県の核燃料サイクル施設立地反対連絡会議は、核燃料サイクル、原発の危険から住民を守り、原子力政策の根本的見直しを求める運動を展開してきました。県にたいして問題点を具体的に示し、抗議してきました。

 県段階の組織である連絡会議の呼びかけに応えて、下北の原発と核燃を考える会、上十三連絡会、核燃いらない横浜の会、核燃から地域住民を守る会がつくられ、学習会を開いたり、申し入れを行うなど、運動の拠点が広がってきました。

 連絡会議は二十一日に開いた代表者会議で、青森県を「核のゴミ捨て場」にしないこと、再処理工場のアクティブ試験をしないことを要求した署名運動を他団体にも呼びかけて始めることを決めました。全市町村長、議長にたいし、連絡会議の県などへの要請内容を知らせ、「認識を共有していく」活動をします。

 連絡会議の河内淑郎事務局次長は、原子力委員会が原子力長期計画について「意見を聴く会」を青森市で開いた時、「原子力には賛成だけど、青森県が核のゴミ捨て場になることがゴメンだと発言した人がいました。こうした人たちとも協力して世論と運動を広げていくことが大事だと思うんです」と話しています。(青森県・猪股文夫)


中間貯蔵施設 和歌山・御坊

人工島に建設 正気か

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プルサーマル計画の中止を求める署名行動を前に集まった県民共同の会のメンバー=6日、松山市

 和歌山県では二〇〇三年二月、使用済み核燃料中間貯蔵施設の計画が浮上し、日ごとに緊迫の度を強めています。

 建設地は、東南海・南海地震で巨大津波が予想される御坊市沖。電力需要見直しで建設めどのない御坊第二火力発電所の埋め立て予定地です。「瀬戸内住民集会in御坊」で元通産省地質調査所の坂巻幸雄氏は「人工島に原子力施設なんて計画者は正気か」と批判しました。

 一昨年八月、「日高原発・核燃料施設反対三十キロ圏内住民の会」(中西敏・代表世話人)は市内一万戸のすべてを訪問。寄せられた八千三百二のアンケートの87・5%が反対でした。しかし誘致派はあきらめず昨年九月市議会で特別委員会を設置。同年十二月議会に向けて、いよいよ誘致推進決議かと緊張が高まる中、地元中の地元、御坊市塩屋町では同地区有権者の72%、千六百三十六の反対請願が集められ、他の二地区分と合わせた三千七百八十七が市議会に提出されました。反対請願は継続審議となりましたが、誘致推進決議提出も許しませんでした。

 誘致派は三月議会に向け再度、誘致推進決議の動きを強め、「住民の会」は御坊市街地の全戸を訪問、反対署名をよびかけています。そうしたなか日高医師会所属の医師九十人のうち六十人が反対運動に賛同を寄せ、うち四十七人が名前も公表してビラを発行しました。

 「使用済み核燃料中間貯蔵施設建設に反対する医師の会」(深谷修平代表)事務局長の龍神弘幸医師は「放射線は非常に危険なものです。被害の起こる可能性のある施設の建設をしてほしくはありません。党派や立場を超え、医師としての良心をかけて運動をしています」とのべました。(和歌山県・川崎正純)


プルサーマル 愛媛・伊方

県民共同の会 30万署名へ

 愛媛県から九州に向かって細長く伸びる佐田岬半島。ここにある伊方原発3号機(伊方町)で四国電力がプルサーマル計画を進めています。日本共産党や社民党、さまざまな住民団体が参加して昨年十月、「伊方原発プルサーマル計画の中止を求める県民共同の会」を結成。「伊方原発のプルサーマル計画の中止を求める署名」を三十万人分集めようと活動を始めました。

 松山市の街頭で六日、署名行動を本格的にスタート。一時間で約二百人の署名が寄せられました。伊方町の隣に位置する八幡浜市に住む兵頭豊子さん(77)は、「プルサーマルのことは、県も市も全然知らせてくれません。私ら原発の近くに住んでいるから不安です。危険なプルサーマル計画はやめてほしい」と署名に応じました。

 県民に十分な説明を行わずに進められるプルサーマル計画に不安の声が広がっています。伊方町に住む男性は、「警報が鳴るたびに原発の事故を心配します。これ以上危険なものを持ちこむのはやめてほしい」といいます。同計画の説明会は、昨年九月四日に伊方町で一度開かれただけで、参加者は伊方町と周辺の住民に限定し、会場からの質問も受け付けない一方的なものでした。

 昨年九月の県議会では、説明会や公開討論会の開催を求める請願を審議しました。自民党などが請願の趣旨に反対したため不採択になりましたが、日本共産党、県政与党の社民党、公明党が請願に賛同しました。

 県民共同の会では、署名行動とともに学習会を行っていく予定です。愛媛原水協の和田宰事務局長は、「原発で事故が起これば、被害は広範囲に及びます。プルサーマル計画の危険を知らせ、県民多数の世論で中止に追いこみたい」と語っています。(愛媛県・大嶋慶太)


 核燃料サイクル 原子力発電所で使い終わった使用済み核燃料を再処理工場に送り、プルトニウムとウランを取り出し、これを新しい燃料にする方式。プルサーマルは、このサイクルの一部。

 中間貯蔵施設 原発から出た使用済み核燃料を貯蔵する施設。“トイレ無きマンション”といわれるように処理の見通しのないまま、いまは原発敷地内に保管しています。しかし満杯に近づき、敷地外に貯蔵施設をつくろうとしています。


原子力政策見直せ 全国センターが署名

 原発問題住民運動全国連絡センターが、全国署名「原子力政策を安全優先の立場で根本的に見直してください」を開始しました。

 署名は(1)原発推進と核燃料サイクルを根本的に見直す(2)原子力の安全規制組織を完全に独立させる(3)原子力政策は広く国民の意見を聞き国会審議を経て決める―という3点を政府に求めるもの。

 原発や核燃料サイクルへの不安が高まっているなか、各地域での緊急要求とむすびつけ、全国でとりくむようよびかけています。署名の趣旨をわかりやすく解説したパンフレットも近く発刊されます。



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