2005年1月26日(水)「しんぶん赤旗」

NHK会長辞任

権力迎合断たずに改革ない

解説


 NHK海老沢勝二会長辞任のきっかけは番組制作費の不正流用など一連の不祥事でした。昨年九月、不正問題を審議する国会の海老沢会長参考人質疑をNHKは生中継せず、国民の批判が高まり、受信料支払拒否が急増。海老沢会長は六日の定例会見で辞任の意向を固めていました。

 十二日、朝日新聞が番組「問われる戦時性暴力」(二〇〇一年一月三十日放送)への安倍晋三・自民党幹事長代理と中川昭一経済産業相が政治圧力をかけたことを報じました。翌十三日、NHKの現役チーフ・プロデューサーの長井暁氏が、政治圧力と大幅改変の事実を告発。政治に迎合するその体質が鋭く問われている最中での辞任です。辞任後の記者会見で海老沢氏は「NHK抜本改革の道筋をつけた」とのべましたが、政治介入問題には触れませんでした。

 NHKはこの間、特定の番組について政治家に事前の説明をすることは「通常業務の範囲」(関根昭義放送総局長)と政治との癒着が日常化している実態を明らかにしました。事実、番組は安倍晋三官房副長官(当時)と会談した一月二十九日と三十日、大幅に改変されました。とくに放送当日の三十日の改変は海老沢会長の関与無しには説明できないものです。海老沢会長はこの問題で、みずからの関与の有無も含めて真相を明らかにする責任があります。

 海老沢会長は局内では職員の意見を聞かず、トップダウンで運営し、政府・与党に迎合する体制をつくり上げてきました。長井氏は十三日の会見で「海老沢体制で、政治介入が恒常化してしまった。政治家から電話がかかると、すぐ現場に伝わる。政府に都合の悪いものは通らないという委縮した雰囲気がまん延している」とNHKの現状を批判しました。

 これまで任期途中で辞任した会長は三人。ロッキード疑惑で保釈された田中角栄元首相を見舞った小野吉郎氏(七六年)。「不偏不党はやめた」など放言を重ねた池田芳蔵氏(八九年)。国会での虚偽答弁が問題になった島桂次氏(九一年)。いずれも与党との癒着、政治がらみの権力闘争が指摘されています。海老沢会長時代にもNHK官邸記者が森首相の「神の国発言」の対応策を指南したとされる問題が起きています。

 九七年に就任し三期、七年を超える海老沢会長体制は予算、人事に加えて地上波デジタル放送問題などでも権力との距離をより近くしていったといえます。今、NHKは、権力との迎合を断ち切り、受信料で支えられ公共放送として、真に国民に顔を向けた改革を進めることなしに再生はありません。荻野谷正博記者



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