2005年1月20日(木)「しんぶん赤旗」

NHK、不自然な弁明

政治介入問題

“圧力感じなかった”


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NHKの番組が政治圧力で改変されたとされる問題で記者会見する松尾武・元NHK放送総局長(左)と関根昭義現放送総局長=19日午後、東京・渋谷のNHK

 「政治的圧力は感じなかった」ので“政治的圧力はなかった”―。「従軍慰安婦」にかかわるNHK番組が改ざんされた問題で、NHKは十九日開いた記者会見でコンプライアンス(法令順守)推進室の調査結果を発表、こんな奇怪な「論理」で政治的圧力を否定しました。これにたいし、告発した長井暁チーフプロデューサーは「政治家に魂を売り渡してしまった現経営陣主導の調査結果」と厳しく批判しました。

納得できない説明、告発の長井氏も反論

 記者会見したコンプライアンス担当の宮下宣裕理事は、政治圧力で番組改変をしたと告発された当時の松尾武放送総局長(現NHK出版社長)ら三人から、長井氏の会見後に事情を聴いたことを明らかにしました。その結果として、安倍晋三自民党幹事長代理(当時官房副長官)とは放送前日ごろに松尾氏らが面談した事実は認めました。

 しかし、「呼ばれた事実はない」とし、「女性国際戦犯法廷」で「国会議員の間にさまざまな議論があることを認識していたので」、安倍氏にも「番組の趣旨について概略説明した」と説明。安倍氏は「番組は公平中立であるべきだ」との「感想」をのべたが、「圧力というような内容ではなかった」としました。

 また、松尾氏は、十八日付「朝日」で、番組への「圧力を感じた」と証言したとされた「NHK幹部」とは、自分であることを明らかにしたうえで、報道内容を否定し、「圧力は感じていない」と繰り返しました。

 宮下理事は、中川昭一経済産業相とは放送前に会った事実はなかったとし、安倍、中川両氏からの電話や第三者を介した圧力もなかったとしています。

 放送当日に番組を三分間カットしたことについて、「カットは業務命令だった」という長井氏の発言も否定し、編集は現場の部長の判断だったなどと説明しました。

長井氏コメント

 NHKの長井暁チーフプロデューサーは十九日、コンプライアンス推進室からの調査結果を受け取ったことを明らかにした上で、次のようなコメントを発表しました。

 「十三日の私の記者会見以降にNHKが取った対応から明らかなように、政治家に魂を売り渡してしまった現経営陣主導で行われた調査結果は、全く信用することができない。NHKの多くの職員から私に、ヒアリングを受けた関係者が、事実を隠ぺいし経営陣が書いたシナリオを受け入れるよう、大変な圧力を受けたと伝えられている。NHKが独自に真相を究明することが不可能なことは明らかだ。第三者機関による徹底的な調査を行い、真相を究明すべきだ」

NHK会見に抗議朝日新聞社

 朝日新聞社広報部は十九日、「NHKの記者会見に抗議する」との見解を明らかにしました。

 それによると、朝日十八日付に掲載した記事の「NHK幹部」が松尾武NHK出版社長(当時、放送総局長)であることを認めた上で、「朝日新聞社は二人の記者が松尾氏に会い、克明に取材した結果を正確に報じ(た)」と主張。「『わい曲』とする本日のNHKの記者会見に抗議します」とのべています。

 個別の点については、詳細な反論を文書で配布するとしました。



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