2005年1月8日(土)「しんぶん赤旗」 各戸配布は民主主義の血流亜細亜大学法学部助教授 石埼学さん
今回の逮捕は、東京・立川市の自衛隊官舎ビラ配布事件で無罪判決が出た直後のことだけに、あぜんとしました。 表現の自由は、憲法のさまざまな自由のなかでも、きわめて大事と考えられています。なぜかというと、もっとも権力によって侵害されやすいからです。 現にビラ配布で社会保険庁職員が逮捕された事件(国家公務員法弾圧事件)、立川の事件、そして今回の事件と、いまの政権を批判する政党やグループばかりをねらいうちにした逮捕が続きました。批判意見を含めて許容されるのが、表現の自由であり、民主主義であることをしっかりつかむ必要があります。 日本はすでに公の場所での表現活動がきびしく規制され、ほかの先進国に比べても表現活動がしづらい国になっています。そのなかで残されたビラの各戸配布は、とくに日本では民主主義の血流のように重要な手段です。ここに公権力が介入してくるのを許しては、民主主義社会の崩壊につながりかねません。 逮捕直前に出た立川事件にかんする東京地裁八王子支部判決は、どういうビラ配布なら住居侵入の罪にあたり罰を受けるか、ルールを明確にしようとした判決です。ビラを配るにあたり、無理に入っていったのか、住民の応対を求めたのか、以前に抗議を受けていたか…。過去の最高裁の判決もふまえたうえで判断基準を示し、そのうえで無罪判決を言い渡しています。警察は、そういう最新の明確なルールを無視して逮捕しており、まさに暴挙です。 さらに今回の逮捕がひどいのは、議会報告や区政に関するアンケートを配って逮捕されていることです。議会制民主主義の立場に立つ公党の有権者への議会活動報告を抑圧するということは、議会制民主主義への直接的抑圧を意味します。 警察にこのような暴挙をさせない世論の高まりが重要です。政党支持にかかわらず、一連の事件にもっともっと関心をもってほしいと思います。 |