日本共産党

2004年12月24日(金)「しんぶん赤旗」

「つくる会」前副会長を教育委員に 埼玉

住民の反対敵視し強行
上田知事の異様な態度


 埼玉県の上田清司知事は二十日の県議会に、「新しい歴史教科書をつくる会」前副会長の高橋史朗・明星大教授(54)を県教育委員に選任する人事案を提出し、自民党と地方主権の会(民主党系)などの賛成多数で同意されました。侵略戦争美化や統一協会との密接な関係で批判を浴びている人物の教育委員起用に執念を見せた、民主党出身知事の異様なまでの態度が目立ちました。埼玉県・林秀洋記者

 高橋氏を県教育委員に起用する方針が明るみに出たのは今月六日。教職員組合や教育関連団体を中心に、直ちに反対運動が広がり、各地で集会やデモ行進などの行動が取り組まれました。選任に反対する知事あてのファクスや手紙も、二十一日朝までに二千二百六通にのぼりました。高橋氏起用に賛成する意見三百三十九通の六・五倍です。

通知に抵触

 高橋氏の特異な政治的立場や言動は、教育委員が政党・政治団体の役員になったり積極的に政治運動することを禁じている「地方教育行政の組織と運営に関する法律」(地教行法)違反の疑いがあります。また、現行の「つくる会」編集教科書(扶桑社刊)の監修者という立場は、教科書の編著作者などを教科書選定や採択に関与させないとした県教育長通知に抵触するものです。

 反対の世論の高まりを受けても上田知事は、高橋氏選任に固執しました。「感性教育や体験教育などの面で第一人者だ」と高橋氏を擁護する一方、「つくる会」副会長だったことは就任要請の時まで知らなかったと釈明しました。ところが、知事が衆院議員時代の二〇〇二年十月、自身が主催するセミナーで高橋氏を講師に招いた際、案内状で高橋氏を「つくる会」副会長と紹介していたことが発覚。この点を質問されると「(案内状は)事務所がやったこと。私は知らなかった」と言い訳しました。

190人が傍聴

 選任への反対運動を敵視する発言も相次ぎました。「反対運動は知事の任命権を侵すものだ」と批判。二十一日の定例記者会見では「反対意見は、一定の団体から組織的に来ているものが多数だ」と決めつけています。

 二十日の県議会で日本共産党は「県民の関心が集まっている」として、人事の場合は省略している委員会審議や質疑・討論を実施するよう議会運営委員会で主張しました。自民、公明、地方主権の会が反対したために質疑・討論抜きの採決が強行されたものの、五つある会派のうち日本共産党、公明党、民主党の三会派が選任に反対するという、人事案件としては異例な結果となりました。

 採決の県議会には約百九十人がつめかけ、傍聴席がいっぱいになりました。上尾市からかけつけた元中学教師の大塚精子さん(73)は「高橋氏が選任されて、子どもたちに申し訳ない思い。しっかりと県教育委員会を見張りながら、地域から学習を深め、戦前の教育に戻すような策動を許さない運動を進めていきたい」と話しました。


「新しい歴史教科書をつくる会」

 日本の侵略戦争や「従軍慰安婦」問題などの教科書の記述が「自虐的・反日的」などと攻撃してきた学者らが一九九七年一月、「日本人としての誇りを取り戻す」教科書をつくるとして結成。戦争そのものの肯定や日本の植民地支配の正当化など、歴史の改ざん運動をすすめています。


高橋氏

教育基本法改悪狙う、統一協会と深い関係

 埼玉県教育委員に選任された高橋史朗・明星大教授(54)は、「新しい歴史教科書をつくる会」結成に参加し、最近まで副会長をつとめてきたほか、右翼団体や教育基本法“改正”を主張する団体で中心的な役割を担ってきました。霊感商法や“集団結婚”で問題になった統一協会とは、関連団体の講師を務めるなど関係が深い人物。

 右翼団体関係では、改憲を主張している「日本会議」の関連団体「日本青年協議会」の創立に参加し、「日本教育研究所」では初代事務局長を務めました。

 教育基本法“改正”をかかげる「『日本の教育改革』有識者懇談会(民間教育臨調)」の運営委員長のほか、ジェンダーフリー教育反対の急先ぽうとしても知られ、副会長として参加した東京都荒川区の男女共同参画条例づくり懇談会では、働く女性の子育て支援を否定する持論を展開しました。



もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp