日本共産党

2004年11月15日(月)「しんぶん赤旗」

予算不足の新潟大地震調査

航空写真を購入できず
現地調査も日帰り


地図

 「泊まり込んで現地調査できればいいのでしょうが金がないので車で往復。日帰りですよ」――新潟大理学部地質科学科長の立石雅昭教授は語ります。

 同大の研究者らは、被災地を歩き回り、崩落や地すべりなど地形の変化、墓石の倒れ方などを観察、記録しています。雨が降れば地形はどんどん変わってしまうため、機動的に調査を行うことが重要です。このため、地理を熟知した地元大学の役割は絶大。全国から訪れる研究調査団を受け入れ、案内するのも重要な役目です。

 しかし、初動から予算不足に悩まされました。

 地形の変化を見るため航空写真を購入しようと思っても、民間会社のものは数十万―百万円で手が出ない。現地に移動する車の高速料金もばかにならない。地震計や、地すべりの危険度の測定装置などを現地に設置したくても、すぐには購入できません。

背景に法人化

 背景には、一面所報のように、国立大学法人への移行にともない、教育研究の基礎単位への予算配分が削減されたことがあります。教員一人当たり十七―二十四万円という額では、一年間の教育研究をまかなうにはとうてい不十分です。「学会が東京であれば二泊三日で五万円はかかりますが、学会は例年春夏に一回ずつあるんです。ほかにコピーや電話代もかかる。地震が起きる前に使い尽くしてましたね」と立石教授もいいます。

 教育にも影響が出ています。学生に自由にコピーをとらせることもできません。博士課程の大学院生に一人二十万円出していた研究費補助も、昨年は十五万円、今年は五万円に減額せざるをえませんでした。「非常に悩みました。研究者としての成長に必要なお金を出せないんですから」。立石教授は苦しい胸の内を語ります。

被災地の警告

 予算不足だからといって、地震の調査で手を抜くわけにはいきません。文部科学省に突発災害にかかわる科学研究費補助金を申請したり、車を緊急車両扱いにして高速料金を免除させるなどして、大学の協力も得ながら改善のメドを立ててきました。

 立石教授は「私たち理学部だけでなく、工、農、教育、人文などの学部の教員、大学院生が調査団に参加しているし、他大学とも協力している。文科省からの支援も必要です」と話します。

 調査に追われながら費用の工面に四苦八苦させられた新潟大の事例。必要な財政措置をしないまま国立大学の法人化を強行した政府の責任を浮かび上がらせています。しかも、来年度から、各大学に国が出す運営費交付金は毎年1%(病院は2%)ずつ削減されます。「全国どこでも大変な状況になる。高等教育が機能しなくなるのでは」と立石教授は懸念します。

 地震で表面化した法人化の問題点。現地からの警告に、政府はしっかりと耳を傾けるべきです。

 坂井希記者



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